当時を知らなくても「3億円事件」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。12月10日は3億円事件が発生した日です。現金強奪事件としては当時の最高額で、世間に大きなショックを与えました。
3億円事件を参考に、「お金の時間的価値」と「現金社会のリスクとコスト」について考えてみましょう。
1968年に現金輸送車から3億円が奪われた事件
1968年12月10日、東京・府中市で工場の従業員に支払われるボーナスおよそ3億円が盗まれる事件が発生しました。警官に変装した犯人が現金輸送車ごと盗み去った大胆な事件です。
残念ながら3億円事件は解決に至らず、7年後の1975年同日に時効を迎えています。戦後最大級の未解決事件として日本の犯罪史に刻まれました。
なお3億円は保険会社から補填(ほてん)され、国内には実質的な被害が出ていない事件としても有名です。私たちも「携行品損害保険」に加入すると現金の盗難は補償されます。旅行保険に付帯されるケースが多く、まとまった現金を持ち歩く際は加入を検討してもいいかもしれませんね。
当時の3億円は今いくら? お金の「時間的価値」
3億円事件は50年以上前に起こりました。総務省の「消費者物価指数」によると、当時の物価水準は現在の約3分の1程度ですから、現在では約9.7億円の価値があると計算できます。
【消費者物価指数の推移 ※()は3億円の価値の推移】
・1970年:30.9(3億円)
・1980年:73.2(7.1億円)
・1990年:89.6(8.7億円)
・2000年:97.3(9.4億円)
・2010年:94.8(9.2億円)
・2020年:100(9.7億円)
出所:総務省統計局 2020年基準消費者物価指数(総合)
このように、「時間の経過に従ってお金の実質的な価値が増減する」という考え方を「時間的価値」といいます。端的にいうと、物価が上がる(インフレ)ならお金の価値が下落し、物価が下がる(デフレ)ならお金の価値は上昇します。上記の例では3億円の実質的な価値が50年間で約3分の1に下落したため、消費者物価指数を使って現在の価値に直しました。
フィナシー読者なら「インフレは資産を目減りさせる」と聞いたことがあるかもしれません。これも時間的価値の考え方で、3億円の実質的な価値がインフレで下落したように、私たちの資産もインフレで目減りが起こります。
例えばあなたが1万円を持っているとき、1個100円のお菓子なら100個買えます。これが年率2%のインフレが起こると10年後には約122円に値上がりし、同じ1万円でも約82個しか買えなくなります。1万円の価値が実質的に約18%下落してしまいました。
インフレによる目減りは、インフレ率以上にお金を増やせば解決できます。同じく2%の利回りで1万円を運用したとき、10年後に約1万2200円になるため、値上がり後も変わらず100個の購入が可能です。
ちなみに直近10年間(2010~2020年)のインフレ率は年間約0.54%となりました。また日本銀行は2%のインフレを目指しています。インフレによる目減りを防ぎたい場合、目標利回りの参考にしてください。