運用体制の評価:運用者/チーム
対象ファンドの投資判断に最終的な責任を持つ運用者や運用者を支える運用チームの能力は言うまでもありませんが、運用者/チームが運用に専念できる環境や運用者/チームメンバーが交代する場合の人材プールなども確認することが重要です。
(3) 対象ファンドの運用実績以外の運用力の証左
本連載の「運用成績による選定とその限界」の中でも書きましたが、ある期間の運用成績が優れていてもそのファンドが将来の好成績につながる運用力を有しているとはかぎりません。そこで、定性評価では、評価対象ファンドの運用成績に加えて、運用者/チームの運用力のその他の証拠を確認することが必要となります。
判定基準
・運用者や運用チームの主要メンバーが、担当ファンドの運用にプラスになると思われる職業経験や学位あるいは語学力等を有している
・運用者や主要メンバーが運用する資産額がその運用会社全体の大きな割合を占める
・評価対象ファンドと同種の運用を幅広い顧客層(例:年金基金やその他機関投資家など)向けに行っている
・評価対象ファンドと同種のファンドを運用し、より長い期間で優れた成績を残している
(4) 運用への熱意・専念度
運用者の中には、ビジネス拡大のために、マーケティング活動に多くの時間を割く方もいらっしゃいます。著名な運用者の中には、執筆や講演あるいは大学等での教育活動に熱心な方もおられます。いずれもその活動自体が評価対象ファンドの運用に必ずしもマイナスとなる訳ではありませんが、逆にプラスになるとは考えにくいのではないでしょうか。また、健康状態やその他プライベートの事情で、運用者等が運用に集中できない状況に陥る場合もあります。
判定基準
・運用者や運用チームの主要メンバーがマーケティングやその他対外活動に大きな時間を割いていない
・運用者や主要メンバーの健康状態は良好で運用に集中できる状況にある
・その他運用者や主要メンバーが運用に集中するための障害は存在しない
(5) 人材の厚み/定着度
現在の運用力を精緻に分析評価しても、運用者や運用チームの主要メンバーが交代してしまっては、今後の運用力は未知数となってしまいます。現在の運用者や主要チームメンバーが優秀であればあるほど、彼ら主要メンバーの離職はファンドにとっての大きなリスクとなります。自発的な退社もあり得ますし、また病気や事故などの不可抗力の場合もあるでしょう。こうした事態への備えがあることも中長期にわたる優れた運用力の条件と考えます。
判定基準
・過去の運用者や主要チームメンバー顔ぶれが安定している
・運用者や主要チームメンバーの後継者が社内/チーム内で育成されている
・運用(責任)者の後継者が決定し、社内/チーム内で周知されている
・運用会社の運用環境並びに報酬水準が業界では定評があり、必要があれば有能な人材を社外から容易に採用できる