運用力は17項目で定性評価

各項目は独立して判定・採点の上、合計点で絶対評価

アクティブファンドの運用力は以下の項目別の判定の積み上げで評価できると考えます。読者の皆様がご自身で評価される場合には、以下の項目を基準に、必要な項目を追加したり、不必要と思える項目を削除して、評価されても良いと思います。ただし、重要なことは、各項目では一定の判断基準に基づいて、他項目からは独立させて評価する(注3)こと、及び(明確な理由がなければ)特定の項目に大きなウエイトを置くことなく、等ウエイトで最終的な評価を行うということです。

(注3)その評価項目のみで判定し採点します。例えば(今回の評価項目には採用していませんが)、「運用経験の長さ」という評価項目があるとします。他の項目との関係は無視し、運用経験年数のみで判定することで、評価自体は容易になります。

筆者自らが行う場合には、まずは項目ごとに1−5点で採点を行います。情報不足などで評価不能の場合は1点とします。合計点が満点である85点の何%となったかで投資の可否を判定する絶対評価方式を採用します。少なくとも50%超できれば60%超のスコアを獲得したファンドを最終候補と考えます。

 

なお、現在の日本の投資信託における標準的な情報開示水準では、情報不足で評価不能と思われる項目が多くなる可能性は否定できません。例えば、多くのファンドではどんな運用者や運用チームが運用しているのかを開示していません。それらのファンドでは、運用者/チームに関する項目は評価不能でしょう。

しかし、運用会社が自信を持っているファンドでは、オンライン上に特設サイトを設けたり、販売促進資料等を別途作成したりすることで、積極的に情報開示を行ってきています。ファンドにとってプラスと考えられる事象は、営業目的の開示情報の中に盛り込まれていることでしょう。そこで、本稿でご提案する定性評価では、あくまでもその根拠となる事象が確認できた評価項目のみ加点することとします。ファンドの運用力にプラスに貢献する可能性の高い要素を認識しながらも、保守的な評価が可能となる体系となっています。情報不足によりどのような人たちがどのような運用を行なっているか理解できないファンドには、いくら過去の実績が優れていても、どれだけ販売会社や運用会社の人に薦められても、投資すべきではありません。これは運用力の優劣を評価する以前の問題でしょう。

本稿をお読みいただいている委託会社の皆様には、こうした視点からアクティブファンドの定性評価が行われ、投資判断に繋がる可能性をご認識いただき、さらに前向きかつ積極的な情報開示のあり方をご検討いただければ幸いです。

それでは、各評価項目における判定基準の例をご説明します。リストアップしている判定基準は、筆者が在籍していた評価機関で利用しているものを編集し単純化したものですが、読者の皆様が使用される場合には、判定基準を追加あるいは削除するなど更にアレンジを加えてもよいと思われます。ただし、言うまでもありませんが、どのファンドも同じ判定基準に沿って採点することが重要です。採点の方法としては、判定基準が2項目であれば、両方を充足すれば満点の5点、片方のみであれば3点、両方当てはまらない場合には1点とするような方法が考えられるのではないでしょうか。

今回の前編では、運用体制の評価に関わる判定基準をご説明します。