コロナショック後の回復は感染防止策や手厚い財政支援が奏功

まだワクチン接種が始まる前に、ソーシャルディスタンスが大事だと分かったところで、製造業は生産を再開できた。これはコロナショック後の2、3カ月で進んだことが雇用のデータから分かる。さらに、米国の経済再開が日本より早めの接種進展によって淡々と進み、非製造業の雇用の回復が続いた。

コロナショックでは、トランプ、バイデン両政権の手厚い緊急支援が影響を受けた消費者や企業に適切に届いた。しかも、FRB(連邦準備制度理事会)の資金供給が銀行を通じて融資として出回り、貸し剥がしによる景気悪化を食い止めた。11 月に緊急事態のための資金供給スピードを緩める「テーパリング」が発表されたが、雇用の正常化が大事な判断要因となっている。

感染者数の再拡大などで失業だけではなく企業の倒産が大幅に増えてしまうことがリスクであった。元に戻れない従業員の失業期間が長くなり、収入も減ったままで消費が増えないとすれば大きな痛手となる。しかし、現時点ではワクチン接種の進展に加え治療薬開発も報じられ始めており、新型コロナウイルスがインフルエンザのような扱いとなる可能性が高まっている。そうなれば、今でも制約が多い海外渡航の正常化で空運や大型ホテルなどの本格的な業績回復が始まるなどの効果が期待できる。

コロナショックからの回復は、米国の大きな財政拡大に依存している。トランプ前政権とバイデン政権合わせて5兆7000 億ドル以上の財政出動がすでに行われた。その多くは個人向けの一時金支給や失業手当の上乗せであった。コロナショックで多くの小売業が店舗を閉鎖したにもかかわらず、米国の小売売上高はわずかなショックの後すぐに回復し、さらに大幅な拡大に至った。店舗に行かなくてもアマゾンなどで物が買えるという技術的な変化もあるが、それ以上に人々の手持ちのお金が大幅に増えたことが主因である。

この臨時収入の概ね3分の1ほどが消費にまわり、多くの人が洗濯機や冷蔵庫などの耐久消費財を買い直したとされる。同程度が住宅ローンの前倒し返済にも回ったようだ。つまり、これほど小売売上高が増えてもここで終わったわけではなく、人々の預金口座には一時金の3分の1が残っているはずということになる。