新型コロナウイルス感染者増加の防止のため、人々の行動を制限したことで引き起こされた世界経済の混乱(ここでは「コロナショック」と呼ぶ)を理解するにあたり、大事な経済指標は米国の雇用統計の1つ「非農業部門雇用者数」であると、このフィナシーで記事(2020年5月26日付)を紹介した。
「コロナショック」からの回復を見極めるには米国雇用統計に注目!
2021 年11 月時点でも、今後の世界経済を占うためにこの指標は重要である。米国の雇用統計とは、失業率、賃金、部門・業種別雇用者数の増減など、米国の雇用状況をまとめて米国労働省が発表するもので、原則として毎月第一金曜日の朝(日本時間金曜日の夜)に発表される。その中でも、非農業部門(農業以外)雇用者数の月次の増減が話題になりやすい。
雇用と消費が急速に回復しいよいよ本格的な業績回復へ
米国では景気の上下動で雇用が大きく変化するので、景気のバロメーターとして注目される。2020 年5、6月発表の4、5月のデータで合計2200 万人以上が職を失い、コロナショックからどのように回復するかが注目された。
実は、足元の時点で2020 年5月の執筆当時のメインシナリオに近い形で推移していることが分かる。日米欧主要国それぞれの感染者増加の防止策とワクチンの開発・接種が奏功し、2021年6月までにロックダウンのような強い行動制限が国別、地域別、業種別など順次解除された。7-9月期には急速に雇用と消費が回復し始め、その後もゆるやかに元の水準に戻りつつある。
デルタ株の流行などがあって全ての雇用(特にレストランの接客など)が戻ったわけではないが、多くのレストランは開いており、どのレストランも求人広告を出しているようだ。つまり、まだ仕事に戻っていない500 万人弱の人々は、例えば接客をしたくない、望む仕事のために引っ越さなければならないなどの理由による一時的な失業者と早期退職者が多いとみている。ある程度予想したように、雇用者数は過去になかったほどのスピードで回復を実現している。