私の寄稿を読んでいただいている皆さんは、このような記事などで勉強し、すでに投資を始めている方が多いと思います。ですから、「リバランス(当初計画した資産配分に戻すこと)が重要」という話は、これまでもいろいろなウェブサイトやアドバイザーからのアドバイスで理解されているかもしれません。でも、なぜリバランスが重要なのかを正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

皆さんの中には、リバランスをすることでリターンが改善すると考えている人もいるかもしれませんが、実はリバランスの目的はリターン改善ではありません。今回は、長期の資産形成を実践する際に必要となるリバランスについて、深堀りしていきたいと思います。

リバランスの効果は局面によって異なる

リバランスによってリターンが上がると考えている人には残念な話になりますが、リバランスをすれば必ずリターンが得られるわけではありません。当たり前ですが、その効果は局面によって異なります。

リバランスでは上がった資産を売り、下がった資産を購入するため、上昇した価格がその後下落する、または下落した価格がその後上昇するような平均回帰傾向がみられる相場ではリターンの上積みが期待できます。それに対して上昇した価格がその後も上昇し続ける、下落した価格がその後も下落し続けるといったモメンタム相場では、もっと上がったであろう資産を早期に売ってしまう一方、もっと下がることになる資産を追加購入することになるため、リターンの足を引っ張ることになります。

直近の10年間のように株式市場が非常に強かった局面においては、リバランスせずに増えた株式をそのまま放置しておいたほうが、ポートフォリオ全体における株式比率が高まったため、想定よりも高いリターンが得られました。実際、2011年10月~2021年9月までの10年間において、長期で維持すべき資産配分(ここでは株式50%/債券50%とした)に毎月リバランスで戻した場合には、当初100だった資産が262まで増えた一方、リバランスせずに放置した場合には、なんと315にもなりました(※株式:MSCIワールド指数、FTSE世界国債指数(円ヘッジ)。売買に伴うコストは考慮していません)。

一方、リーマンショックやコロナショックのように市場下落後に回復する局面においては、下がって安くなった資産を買い増すことができるため、リバランスするほうがリターンは向上する傾向がみられました。実際、コロナショックが直撃した2020年を例にとってみてみると、リバランスした場合、当初100だった資産が109になったのに対して、リバランスしかなった場合には100が108になっており、リバランスしたほうが有利な結果になりました。

これらから分かる大事なことは、リバランスによって必ずしもリターンがプラスになるとは限らないということ。だったら、何のためにリバランスをするのでしょうか?