前回は2022年5月の法改正について、会社員や公務員という働き方を60歳以降も続けている方のiDeCoがどうなるのか、ということを解説させていただきました。今回はフリーランス、そして専業主婦の方といった、60歳の時点で国民年金被保険者の資格を喪失してしまう方々について解説します。

 

フリーランスは任意加入してiDeCoを継続

マネー誌の取材・編集などをしているフリーランスのマリさんから質問をいただきました。

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マリ: 現在57歳で、iDeCoに加入しています。私の場合、60歳以降iDeCoを続けることはできないのでしょうか?

大江:マリさんは国民年金に加入していると思うのですが、60歳の時点で国民年金の加入期間は何か月になる予定ですか?

マリ: えーっと、今年の「ねんきん定期便」に書いてある年数に60歳になるまでの月を足すと、 450ヶ月 になります。

大江:そうですか。だとすると、マリさんの場合、60歳以降、30ヶ月 国民年金に任意で加入することができて、その間は iDeCoに加入をすることができます。

国民年金の任意加入というのは、60歳時点で老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などに、年金額の増額を希望するときに、任意で国民年金に加入し、国民年金保険料を払い続けることをいいます。65歳未満では国民年金が満額もらえる40年に達するまで任意加入が可能で、その間iDeCoも加入、つまり積み立てをすることができます。

マリ:国民年金に任意加入する、ということは、今払っている国民年金保険料を払い続けるだけではなく、何か手続きをする必要があるということですか?

大江:その通りです。お住まいの市区役所・町村役場の国民年金担当窓口または、お近くの年金事務所に出向いて「任意加入」の手続きをしてください。日本年金機構のホームページをみると「60歳の誕生日の前日より」となっていますが、60歳を迎える月になったら受け付けてくれるところも多いようです。保険料の納付方法は、原則口座振替となります。

手続きに必要なのは、「ねんきん手帳」と「預(貯)金通帳」および「その金融機関への届出印」です。通常の国民年金保険料同様に、前払いにすると納付する国民年金保険料の負担が少し減りますから、可能ならば検討してみるといいでしょう。

マリ:付加保険料も納めることはできるのですか?

大江:さすが、マリさん。付加保険料を払っているのですね。任意加入の間も付加保険料を納めることができます。付加保険料400円を、国民年金保険料に上乗せして払うと、付加年金額として「200円×付加保険料納付月数」がずっと老齢基礎年金に上乗せされますから、ぜひ利用したい制度ですよね。マリさんの場合、任意加入することで老齢基礎年金も満額もらえるようになりますし、さらに付加保険も年間6千円上乗せされて、生涯受け取れる年金額を増やすことができます。

マリ:iDeCoも60歳以降続けるにあたって手続きが必要になりますか?

大江:はい、必要になります。iDeCoについても、国民年金被保険者でなくなった時点で一旦加入資格喪失し、任意加入が確認できた時点で再加入ということになりますから、iDeCoの方も、手続きは必要になる予定です。来年5月には明らかになりますから、60歳が近くなったら確認してみてください。手続きが遅れると、限られた任意加入の期間を有効活用できませんから、早めの確認、早めの手続きをお勧めします。ちなみに、iDeCoの拠出限度額は付加保険料を納めている場合、その分減額されます。さらに、千円単位なので付加保険料が400円だとしても千円分限度額が下がって6万7000円が拠出限度額となります。