「買付0円問題」の真相1:一般NISAと比較してみると……
まずは、「約32%」という買付0円口座の割合、ざっくり言えば、つみたてNISA口座を開設しても、3人に1人は利用していない、ということですね。でも、この割合自体は他の制度と比べて高いのでしょうか? それとも低いのでしょうか? まずは、同じ非課税投資制度の一般NISAと比較してみました。
先ほどの『FPジャーナル』の記事と同じ計算をしてみると、2020年12月末までに開設された「一般NISA」口座は約1220万口座で、2020年に一度も買付がなかった口座は約578.16万口座ですから、買付0円口座の割合は「約47%」になりました。つみたてNISAの買付0円口座の割合「約32%」は、一般NISAよりも10%以上も低い、ということです。
もちろん、つみたてNISAと一般NISAは同じ年に併用できませんので、利用者自体が異なります。また、同じ非課税投資制度だとは言え、制度の内容自体が違いますので、単純に比較できるものでもありません。でも、少なくとも、つみたてNISAの「約32%」という買付0円口座の割合自体は必ずしも高いとは言えない、そんな感じだと思います。
「買付0円問題」の真相2:制度開始以来の推移を見てみると……
次に、つみたてNISAの買付0円口座の割合について、2018年の制度開始以来の推移を確認してみました。金融庁のデータをもとに、2018年末、2019年末、そして、2020年末の買付0円口座の割合を計算してみると、41.7%→42.5%→32.5%となりました。特に2020年は、つみたてNISAの買付0円口座の割合が大幅に低下しているのです。
さらに、これを年代別で計算してみると、20代は46.9%→47.3%→36.7%、30代は43.7%→48.2%→33.5%、そして40代は39.4%→42.4%→31.1%と、2020年は買付0円口座の割合が10%以上も減っているのです。
口座の数が大幅に増えている一方で、買付0円口座の割合は大幅に減っているわけですから、2020年は口座を開設したら、すぐに買付している人が多かった、ということです。コロナ禍でも若者は実にしたたかで頼もしい、そんな風にも思います。
以上のように、つみたてNISAの「買付0円問題」の真相を探ってみると、買付0円口座の割合やその多寡を問題視する以上に、つみたてNISAの利用が若者を中心に“名実ともに”進んでいる、そんな様子が浮かび上がってきます。
ですから、まだ口座を作っていない人は、「買付0円問題」を聞いて安心してはいけないのです。むしろ「ぼやぼやしていられませんよ!」と、そんな風にセミナーではお伝えしています(笑)。ご参考まで。