親子で財産の状況を共有しておくこと

この問題を解決するためには、「成年後見人」を選任するか、「家族信託」を活用するという方法があります。これらの制度を用いれば、親が認知症になったとしても、子供の判断で持ち家を売却できる可能性があります。成年後見人は成年であるという条件を満たせば、子供や孫でも就任できます。ただ、成年後見人になるには、家庭裁判所を通じて所定の手続きをとらなければならず、それが面倒ということもあって利用がなかなか進まない状態です。

また、居住用の家を売却する場合は、成年後見人といえども自由に売却できません。家を売却する必要性を家庭裁判所に認めてもらう必要があるのです。ちなみに売却が認められるのは、①親を介護施設に入れるための一時金が必要、②生活費が足りないので家を売却して補填する、③すでに親が介護施設に入っており、家に戻ってくる見込みがない、というケースです。

また家族信託は、親が認知症などになった時にその影響を受けることなく子供が親に代わって財産の管理や処分が出来るというもので、成年後見人制度よりも柔軟な運用ができるという点で注目されています。しかし、家族信託は親が認知症になる前に家族信託の契約を結んでおく必要があります。誰も自分がいつ認知症になるかは分からないので、すでに認知症になってしまった場合だと、家族信託の契約が結べなくなるケースが考えられます。

よく言われることですが、親がある程度の年齢になったら、子供との間で財産の状況をしっかり確認しておくことが肝心です。それと同時に、家族信託なら親が元気なうちから活用できるので、早めに親の財産内容を子供と共有するとともに、資産管理を子供に任せることも視野に入れたほうが良いでしょう。

これは筆者の経験でもあるのですが、父親が亡くなった時に、母親から「お金のことはすべてお父さんに任せていたので、私は何も知らない」と言われても、対処の仕様がないのです。