去る7月16日、金融庁は、つみたてNISAの口座数が今年3月末時点で361万5075口座に達したとの調査結果を公表した。つみたてNISAの口座数が伸びていることについては以前も本連載で取り上げたが、四半期ベースでの増加幅は過去最高になったという。
確かに、筆者もここ最近、何年も連絡を取っていなかった知人友人から「投資信託について教えてほしい」というメッセージを受け取る機会が増えた。つみたてNISAをきっかけに、投資信託保有者の裾野が広がっていることは素直にうれしい。
一方で、SNSにはどこかで聞きかじった、判を押したような情報があふれており、この点にはいささか不安も覚える。そこで今回は、世間でよく挙げられている「投資信託を選ぶ際のチェックポイント」を3つに絞り、ファンドアナリストの視点から考察していきたい。
「純資産残高」は大きいほうがよい?
「残高が小粒なファンドは、繰上償還の危険性があるので避けたほうがよい」と言われることがある。ここでまず、投資信託の「償還」について整理をしておくと、償還とは投資信託の運用を終了して資産の清算を行い、償還日とした時点の保有者に対して保有口数に応じたお金を返還することをいう。償還には、あらかじめ設定されていた期限で償還される「満期償還」と、この期限から前倒しで償還される「繰上償還」の2種類がある。いずれも投資信託の運用が強制的に終了してしまうため、積立など長期の資産形成を目的としている場合はなるべく避けたいところだ。
一般的な繰上償還の条件は、「一定の受益権口数を下回り、今後も口数の増加が見込めない場合」であり、残高の最低ラインを10億円から30億円としている商品が多い。運用会社にとっては効率的な運用ができず、また、運用を続けていても赤字になってしまう水準だと考えてほしい。
では、残高が小さい投資信託は、一律に候補から除外したほうがよいのかと言うと、決してそういうわけではない。設定から3年以内の若いファンドのほか、流動性の低い中小型株式や新興国株式を組み入れているファンドなら、残高が小規模でもさほど目くじらを立てる必要はないだろう。
むしろ、規模よりも推移に着目してほしい。例えば、十数億円程度の残高規模でも、前述したように設定からまだ年月が経過していなかったり、少しずつ増加したりしているなら問題はない。逆に、数千億円あった残高が短い期間に急減している、あるいは、元々数百億円程度だった残高がじわりじわり減少している、というような場合は注意したほうがよい。急速な資金流出によって運用に支障が出る可能性があるほか、繰上償還の可能性も否定できないためだ。