あらすじと登場人物

何度かの転職を経て、60歳となり定年退職を迎えた高橋さん。引き続き65歳まで雇用継続してもらえることになりましたが、収入は大幅にダウンしました。人生100年時代と言われる長い老後を迎えるにあたって、まだまだお金の悩みは消えてくれません。そんな高橋さんの元に、お金の神様が老後の資産運用の知恵を授けに現れました……。

高橋啓太

営業職の会社員。お金に関する教育をほとんど受けてこなかった。アイドル鑑賞が生きがい。60歳。

高橋亜弥

啓太の妻。結婚後も会社員として共働きで家計を支える。趣味はコミック読書。

 

老後資産の神
合同会社フィンウェル研究所 代表

野尻哲史さん

内外の証券会社調査部、運用会社投資教育部門を経て、2019年5月、合同会社フィンウェル研究所を設立。資産形成を終えた世代向けに資産のとりくずし、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会、生活経済学会、日本FP学会、行動経済学会などの会員。2018年9月より金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』『老後難民』ほか多数。

「老後」の収入は年金だけじゃない?

野尻さん:老後の収入源は3つ。「年金収入」「勤労収入」「資産収入」じゃ。

高橋さん:資産収入? 私たち別に不動産を持っているわけでもないですよ。

野尻さん:いやいや、あなた方はこれまで毎月少しずつ投資信託で積立投資をコツコツ続けてきたんじゃろう?

高橋さん:あ、そう言われるとそうですね。

野尻さん:ほかの神様に聞いたところによると、高橋家の資産は、毎月4万円を、だいたい年率3%のリターンで25年間積立投資をして、1800万円弱にはなっているはずじゃ。そのお金は「将来の資産収入」のために準備してきた立派なお金じゃよ。

(中略)

野尻さん:資産運用で築いたお金は、そのまま定年を迎えたからといって「運用する」ことをやめなくていい。「運用しながら使う」ことを前提に、「年率3%の運用と残高の4%を引き出す」プランをワシはおすすめしておるよ。そうすれば、ぐんと資産を長持ちさせることができる。

亜弥さん:へー。でも、「年率3%の運用と残高の4%を引き出す」だとマイナスじゃない?

野尻さん:それでいい。「儲けよう」と思わなくていい。むしろ「どうやって上手に減らすか」を目的に考えるべきなのじゃ。そりゃあもちろん、運用の年率は4%、5%と高いほうがいいに決まっている。じゃが、その分リスクをとることになり、安心して運用することが当然難しくなってくる。「無理をしない」ことが最も大切なのじゃ。

高橋さん:無理をしない。

野尻さん:そう。資産が減ることに過剰に拒否反応をもたないこと。そして絶対に忘れてはならないのが、95歳というゴール。この時点で資産が余るか、できれば0円できちんと使いきることを意識して、ゴールから逆算してプランを立てることじゃ。ワシはそれを「逆算の資産準備」と言って、30代〜95歳のスパンでみんなに提案しておる。

亜弥さん:そんなに長い目で見るんですね。