老後のお金はどうやってとりくずせばいい?

野尻さん:逆算の資産準備を解説するぞ。これは4つのステージに分けられる。

ステージ1/35〜59歳:積み立てながら運用する時代
ステージ2/60〜64歳:そのまま運用する時代
ステージ3/65〜79歳:使いながら運用する時代
ステージ4/80〜95歳:使う時代

野尻さん:まず、ステージ1の35〜59歳は、あなた方がやってきたとおりのことじゃ。積み立てながら運用する時代。「資産形成」の期間じゃな。ここはほかの神様の指導もあって、退職金を合わせるとなんとか60歳時点で2000万円まで準備することができた。

亜弥さん:ちょっと待って。「資産形成」って何? 「資産運用」とは違うの?

野尻さん:奥さん、いいところに気づくの。「資産形成」は目的、「資産運用」は手段じゃ。資産運用は資産形成という目標を達成するために、投資信託などで退職後の資産を積み上げていくことをさす。

亜弥さん:資産形成は目的、資産運用は手段。

野尻さん:次に、ステージ2の60〜64歳が足元の状況じゃの。まずは継続雇用が確保できたことは喜ばしい。さっきチラと高橋さんが言っていたが、年収は3割もダウンするらしいから、もう積立投資はできないじゃろうが、2000万円はそのまま運用するじゃ。

亜弥さん:そのまま2000万円は運用を続けるのね。

野尻さん:次は65歳からの15年間じゃ。これがステージ3じゃな。ここは資産形成ではなく、「資産活用」の期間。資産活用とは、築いてきた資産を運用しながらとりくずして、持っている資産を文字どおり活用すること。さっき伝えたとおり資産収入は「年率3%の運用と残高の4%を引き出す」のが鉄則じゃ。勤労収入だけでなく、年金収入もこの期間の65歳から入ってくる。

亜弥さん:80歳時点までということは、私たちはあと20年運用し続けるのね。

野尻さん:そうじゃ。原則、ここからは新規の積み立てはストップする。最初の5年間はそのまま運用を継続するだけで、そのあとの15年間は、少しずつ引き出していくことを意識する。

亜弥さん:どうしていっぺんに売却してはいけないの?

野尻さん:売却も時間分散でリスクをなるべくコントロールしたいからじゃ。売却も積立同様に少しずつ時間をかけて行っていくとすれば、相場の急落もそれほど重い心理的な負担にならないはずじゃろ。コツコツとりくずして、投資からの撤退、カッコよく言えば出口戦略を実践するんじゃ。

高橋さん:そうか、どうやって撤退するかも考えないといけないのか。

野尻さん:登山をするときは、事前に目的地までのルートだけでなく、その後何時までに、どうやって下山するかもプランを立てるじゃろう? 資産形成や資産活用もそれと同じじゃよ。

高橋さん:確かに……。

野尻さん:次にステージ4の「使う時代」は、運用をやめて資産収入については引き出すだけにする。理由は、投資に必要な判断が難しくなる可能性があるから、運用からは手を引き、ここからは「資産を使うだけ」に完全にシフトする。

亜弥さん:ここも4%の定率で引き出すのですか?

野尻さん:いや、この段階ではもう運用しないので定額でいいんじゃ。そのときからあと何年生きるのかを想定して、その年数で今の資産額を割れば、年間の引き出し額が計算できるな。

その時代はそれぞれの体力や環境にもよるが、活動的ではなくなるだろう。もしかしたら健康に難があるかもしれん。だからその頃の収入は、年金収入と資産収入が中心になり、勤労収入はあまり望めない。この時期こそわかりやすい資産収入であってほしいわけじゃ。

亜弥さん:ステージ4の「使う時代」は勤労収入ではなく、年金収入と資産収入が中心ね。