finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2024.05.17
会員限定
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声 も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第7回目です。

Q:職員「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」

A: 支店長「顧客本位と顧客満足は似ていますよね。お客さまのご意向をよく聞いて、お客さまにご満足いただける仕事をすることが、顧客本位ですよ」

森脇's Answer:

相手をよく知り、必要であれば意に沿わない提案も

一見、問題がなさそうに感じてしまう回答ですが、顧客本位を理解していない回答の代表例と言っていいでしょう。

「顧客本位」は言葉としては易しいため、誰でも意味が分かると思われがちですが、これがなんとも深く、広がりのある概念なのです。「顧客本位で取り組みます」と宣言するのは簡単ですが、いったい何をどのようにしたら顧客本位であるのか具体的には分かっておらず、顧客満足との違いも明確に説明できない役職員は少なくないでしょう。

顧客本位と顧客満足との違いについて、衣料品店での接客を例に考えてみましょう。試着をした顧客に対して、店員が次のように声を掛けました。
店員A「お似合いです。すてきです。サイズもちょうど良いですね」
店員B「それもお似合いですが、他のデザインも試着してみませんか? サイズはもうワンサイズ上げていただくとほっそり見える効果がありますので、お試しになってみてはいかがですか」
店員Aは顧客満足、店員Bは顧客本位の例です。お客さまに気持ちよく買い物をしていただくことを考えれば、Aのようにポジティブな声掛けをすることが有効でしょう。一方、お客さまのためになるならば、たとえ試着したものをお客さまが気に入っていたとしても、より似合うと思える別の服を提案することも考えられるわけです。

顧客本位での対応は、信頼できる家族や友人に付き添いをお願いした場合を想像してみるとよいでしょう。そのアドバイスはBに近いものとなるはずです。「似た服を最近買ったでしょう」とか「あなたが既に持っている服に全部合いそうね」とか、あるいは「今日は購入を見送ったらいかが?」などと言うかもしれません。このようなアドバイスは、その人を知らないとできないものです。そう、顧客本位とは、お客さまのことをよく知って、お客さまの家族のように親身になり、お客さまのためのアドバイスをすることなのです。

このように、顧客本位と顧客満足の大きな違いは、お客さまとの関係性にあります。顧客満足を高める活動は必ずしも個々人としてのお客さまのことを知っている必要はありませんが、顧客本位の活動は目の前のお客さまのことを知らないと何もできません。

顧客に提供する商品が衣料品のように一般的な消費財である場合には、顧客満足を重視した営業活動で問題ないことが多いのですが、これが金融商品となると話は別です。

私たち金融機関職員には信認される者としての義務があります。それは医師や弁護士が患者や依頼人との間に情報の非対称性があるために専門家として信じて任されるように、一種の依存関係が生じる職業に課せられている義務と言っていいでしょう。それがフィデューシャリー・デューティーです。言い換えるなら、金融機関職員は高い倫理観を持つべき職業人として、お客さまに接しなければならないということなのです。ここに金融機関職員が顧客本位を実践すべき理由があります。

では、金融機関における顧客本位と顧客満足は具体的にはどのような活動なのか確認しましょう。顧客満足の活動例としては、丁寧な接客、店内美化やあいさつ運動、地域の行事に参加することなどが挙げられます。これらの活動は大切なものですが、顧客本位と比較するためにあえて言えば「お客さまのいいなり」になりかねない側面があります。

一方、お客さまのために耳の痛い話もするのが顧客本位です。例えば「投資は怖い」というお客さまに元本保証の商品のみを提案することは、その場では顧客満足であるかもしれませんが顧客本位とは言えません。損をした経験があるから怖いのか、ただ漠然と怖いのか、その言葉の背景にあるお客さまの考えをうかがいつつ、それでも資産形成のための手段として投資の必要性が認められるのであれば、ときにはお客さまが恐怖心を乗り越えて投資の世界に足を踏み入れるお手伝いをすることも私たちの仕事なのです。お客さまの記入した情報シートや発せられる言葉をうのみにして案内するだけでは、金融のプロフェッショナルとは言えません。

「顧客本位」を学ぶ機会を用意することが大切

顧客本位の活動は、お客さま一人ひとりに合わせて、最善の提案をしていきます。場合によっては金融商品の購入や契約をお断りしたり、お客さまの契約希望金額よりも減額するようアドバイスしたりします。これは投資信託の販売のみならず、融資も含め、金融機関が提供できる商品やサービス全てに共通した姿勢です。

支店長に求められることは、顧客本位の正解を示すことではありません。学ぶ機会を用意することだと思います。顧客本位の正解は常に目の前のお客さまが持っているのですから、そのためにどう活動すべきかを最も理解できるのは、実はお客さまと接している担当者です。学びや気づきを得るために、支店内の職員でグループセッションの機会を設けてみてはいかがでしょうか。実際のお客さまの事例を出して、何がそのお客さまの最善であるのかを具体的に話し合うとよいでしょう。顧客本位の活動は、常に現場での実践なのです。

Q:職員「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」

A: 支店長「顧客本位と顧客満足は似ていますよね。お客さまのご意向をよく聞いて、お客さまにご満足いただける仕事をすることが、顧客本位ですよ」

森脇's Answer:

相手をよく知り、必要であれば意に沿わない提案も

一見、問題がなさそうに感じてしまう回答ですが、顧客本位を理解していない回答の代表例と言っていいでしょう。

「顧客本位」は言葉としては易しいため、誰でも意味が分かると思われがちですが、これがなんとも深く、広がりのある概念なのです。「顧客本位で取り組みます」と宣言するのは簡単ですが、いったい何をどのようにしたら顧客本位であるのか具体的には分かっておらず、顧客満足との違いも明確に説明できない役職員は少なくないでしょう。

顧客本位と顧客満足との違いについて、衣料品店での接客を例に考えてみましょう。試着をした顧客に対して、店員が次のように声を掛けました。
店員A「お似合いです。すてきです。サイズもちょうど良いですね」
店員B「それもお似合いですが、他のデザインも試着してみませんか? サイズはもうワンサイズ上げていただくとほっそり見える効果がありますので、お試しになってみてはいかがですか」
店員Aは顧客満足、店員Bは顧客本位の例です。お客さまに気持ちよく買い物をしていただくことを考えれば、Aのようにポジティブな声掛けをすることが有効でしょう。一方、お客さまのためになるならば、たとえ試着したものをお客さまが気に入っていたとしても、より似合うと思える別の服を提案することも考えられるわけです。

顧客本位での対応は、信頼できる家族や友人に付き添いをお願いした場合を想像してみるとよいでしょう。そのアドバイスはBに近いものとなるはずです。「似た服を最近買ったでしょう」とか「あなたが既に持っている服に全部合いそうね」とか、あるいは「今日は購入を見送ったらいかが?」などと言うかもしれません。このようなアドバイスは、その人を知らないとできないものです。そう、顧客本位とは、お客さまのことをよく知って、お客さまの家族のように親身になり、お客さまのためのアドバイスをすることなのです。

このように、顧客本位と顧客満足の大きな違いは、お客さまとの関係性にあります。顧客満足を高める活動は必ずしも個々人としてのお客さまのことを知っている必要はありませんが、顧客本位の活動は目の前のお客さまのことを知らないと何もできません。

顧客に提供する商品が衣料品のように一般的な消費財である場合には、顧客満足を重視した営業活動で問題ないことが多いのですが、これが金融商品となると話は別です。

私たち金融機関職員には信認される者としての義務があります。それは医師や弁護士が患者や依頼人との間に情報の非対称性があるために専門家として信じて任されるように、一種の依存関係が生じる職業に課せられている義務と言っていいでしょう。それがフィデューシャリー・デューティーです。言い換えるなら、金融機関職員は高い倫理観を持つべき職業人として、お客さまに接しなければならないということなのです。ここに金融機関職員が顧客本位を実践すべき理由があります。

では、金融機関における顧客本位と顧客満足は具体的にはどのような活動なのか確認しましょう。顧客満足の活動例としては、丁寧な接客、店内美化やあいさつ運動、地域の行事に参加することなどが挙げられます。これらの活動は大切なものですが、顧客本位と比較するためにあえて言えば「お客さまのいいなり」になりかねない側面があります。

一方、お客さまのために耳の痛い話もするのが顧客本位です。例えば「投資は怖い」というお客さまに元本保証の商品のみを提案することは、その場では顧客満足であるかもしれませんが顧客本位とは言えません。損をした経験があるから怖いのか、ただ漠然と怖いのか、その言葉の背景にあるお客さまの考えをうかがいつつ、それでも資産形成のための手段として投資の必要性が認められるのであれば、ときにはお客さまが恐怖心を乗り越えて投資の世界に足を踏み入れるお手伝いをすることも私たちの仕事なのです。お客さまの記入した情報シートや発せられる言葉をうのみにして案内するだけでは、金融のプロフェッショナルとは言えません。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! 新入職員の自分は雑用ばかりでツライです。早く戦力になりたいです!」
2024.04.22
次の記事
「お客さまがお怒りです! 助けてください支店長!」
2024.06.21

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

2026.02.26

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

2026.01.23

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

2025.12.22

「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」

2025.12.03

「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」

2025.10.17

「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」

2025.09.19

「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」

2025.08.22

「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」

2025.07.18

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

2025.06.20

「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

2025.05.23

おすすめの記事

マネックス証券で国内株「ブル型」と合わせて「ベア型」がランクイン、「ゴールドプラス」はトップ10陥落

finasee Pro 編集部

「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>佳作:窓口で、ほどく【2月13日「NISAの日」記念】

finasee Pro 編集部

「金利の復活」局面で脚光を浴び始めた債券投資
「情報の非対称性」への依存から脱却できるか

浪川攻

「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>佳作:新人証券マンの熱意と決意【2月13日「NISAの日」記念】

finasee Pro 編集部

楽天証券の売れ筋に変化、「S&P500」や「FANG+」が後退してアクティブファンドがランクイン

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
マネックス証券で国内株「ブル型」と合わせて「ベア型」がランクイン、「ゴールドプラス」はトップ10陥落
スタイル分析で確認する運用の一貫性と再現性
プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う
「金利の復活」局面で脚光を浴び始めた債券投資
「情報の非対称性」への依存から脱却できるか
【金融風土記】九州一の大都会はどんな様子なの?‟フルスペック”福岡県の金融動向
「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>佳作:窓口で、ほどく【2月13日「NISAの日」記念】
「銀証連携」の強化と「支社体制」の導入でコンサルティング営業の高度化を加速 case of 東京きらぼしフィナンシャルグループ
進化する米国スーパーノヴァ 顧客本位な行動の「習慣化」がカギ
「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>佳作:「あなたが悪いわけじゃない」―その一言が教えてくれた長期投資【2月13日「NISAの日」記念】
【投信市場の20年を振り返る】信念を持ち「顧客本位の業務運営」を続ければ、次の20年も資産運用ビジネスは成長できる
【金融風土記】九州一の大都会はどんな様子なの?‟フルスペック”福岡県の金融動向
「銀証連携」の強化と「支社体制」の導入でコンサルティング営業の高度化を加速 case of 東京きらぼしフィナンシャルグループ
総合証券モデルの利点は残し、それ以上の価値を生む「合弁会社設立」から見えてくるグループの覚悟 case of 三井住友フィナンシャルグループ/ SMBC日興証券
プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う
「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>佳作:「あなたが悪いわけじゃない」―その一言が教えてくれた長期投資【2月13日「NISAの日」記念】
【投信市場の20年を振り返る】信念を持ち「顧客本位の業務運営」を続ければ、次の20年も資産運用ビジネスは成長できる
楽天証券の売れ筋に変化、「S&P500」や「FANG+」が後退してアクティブファンドがランクイン
「Japan Fintech Week」初日、金融庁幹部が暗号資産ETFの解禁にあっさり言及
【プロが解説】8.5兆円の国内アパレル市場は群雄割拠、商品戦略と周辺事業が企業価値を左右する
「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>優秀賞:家族の笑顔を見るために【2月13日「NISAの日」記念】
ふくおかフィナンシャルグループは「資産形成と決済」で日常と未来に寄り添う次のステージへ
~「投信のパレット」7000億円突破と新サービス「vary」
「支店長! ノルマから解放されたいです!」
「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」<実務者部門>結果発表!【2月13日「NISAの日」記念】
【金融風土記】九州一の大都会はどんな様子なの?‟フルスペック”福岡県の金融動向
笛吹けど踊らぬ“あの話”がついに動き出す?「高市一強」時代に金融庁が攻勢に出る5領域とは
中国銀行の売れ筋に新規取り扱いファンドが続々ランクイン、「WCM世界成長株厳選ファンド」が第2位に
「銀証連携」の強化と「支社体制」の導入でコンサルティング営業の高度化を加速 case of 東京きらぼしフィナンシャルグループ
【みさき透】高校の試験に「インベストメントチェーン」「顧客本位」の出題が?!こどもNISAで熱を帯びる金融教育と金融機関の関わり方

総合証券モデルの利点は残し、それ以上の価値を生む「合弁会社設立」から見えてくるグループの覚悟 case of 三井住友フィナンシャルグループ/ SMBC日興証券
福岡銀行で「netWIN」や「米国成長株投信」を再評価、一方で国内高配当株や純金ファンドの人気も継続
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら