富裕層は情報感度が高く、行動力があり、リスクの取り方が上手い

この調査結果を見て感じたことは、「富裕層はリスクとの付き合い方が上手」だということです。今回のコロナ禍では、実体経済は大きなダメージを受けている一方で、国内海外ともに株式市場は好調で、その恩恵を受けた人々が新たに富裕層の仲間入りをしたため、富裕層の数が増えているという背景があります。

日頃から、リスク性資産を保有し慣れていることもあってか、富裕層は前代未聞のコロナ禍にあっても冷静で、自分が取ってもいい適正リスクをよく知って行動している印象でした。

健康を大切にし、社会のルールを守る重要性も知っているからこそ、コロナ対策はしっかり行い無理をしません。その一方で、例えば、政府が「Go to トラベルキャンペーン」を始めた時に、素早く制度を活用して出かけたのは、お金や制度の活用が上手な人々でした。この傾向は旅行だけにとどまらず、給付金への申込みやマイナポイント制度の活用、スマホ決済各社のキャンペーン活用などでも同様の傾向が見られました。

本来、制度として一番助けたいのはもっと経済的に困っている人、という批判はありますが、すぐに情報を捉える情報感度の高さと、制度が始まったらすぐに動けるだけの準備が日頃からできている点は見習いたいところです。

また、FP仲間と話をしていて、在宅ワークが増えて時間ができたのをきっかけに、家計の見直し相談、保険や資産配分の見直し相談、不動産の内覧や取引なども増加傾向にあることに気がつきました。在宅ワークの普及でZoomなどのオンラインツールを利用し慣れた人が増え、マネー相談の現場でも活用が進み、遠隔地との人もむしろ会いやすくなっていることも後押しとなりました。

明日からすぐに富裕層になれるわけではないにしても、「起きている事態を冷静に受け止めつつ、今だからできることに注目してすぐに行動する」そんな富裕層の姿勢を、私たちは今こそ学ぶべきではないでしょうか。

参照データ NRI「富裕層アンケート調査」(2020年) https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2020/cc/1221_1