富裕層はコロナ禍で積極的に学んで動いている
表2は、富裕層・超富裕層に該当する企業のオーナー経営者を対象に、コロナ禍で個人資産の管理・運用の考え方にどのような変化があったのかを質問しています。調査対象が経営者ですから、1位に「所有する事業や法人の先行きが以前よりも心配になった」が来るのは、納得の結果です。
注目したいのは、3位「経済の先行きや、自分が管理・運用する資産に関して、積極的に情報収集や勉強をするようになった」、4位の「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを、以前よりも気にするようになった」です。
富裕層は日頃から、リスク商品を保有する割合が高くなりますが、コロナ禍のように先行き不透明な時だからこそ、より積極的に情報を仕入れて、リスクに対して主体的に考えています。そうした姿勢が、「割安になった株式や投信の購入を検討した」「株式や投信の売却を検討した」「資産価格の下落は、相続や事業承継の好機だと思った」など、タイミングを読んだ迅速な行動につながるのでしょう。
表2.コロナ禍での個人資産の管理・運用の考え方の変化
(企業のオーナー経営者における富裕層・超富裕層)
出所:「NRI富裕層アンケート調査」(2020)
富裕層は「意味のあるお金の使い方」を知っている
表3は、富裕層の消費や生活がコロナ禍でどのように変化したのかを表しています。1位は「健康や体力増進に関する意識が高まった」、2位が「家族との会話やコミュニケーションが増えた」となっています。富裕層は資産の維持管理にもアンテナを張っていますが、その一方で、すべての土台となる健康や家族の大切さを知っているのだと考えられます。
3位の「ソーシャルディスタンスを意識した旅行をするようになった」は、Go To トラベルキャンペーンの影響などもあると思いますが、旅行は家族の絆を強めて心身のリフレッシュをするのにいい機会となります。また、9位の「自宅で長く過ごすための環境を整えた」には、より快適に家での時間を過ごすための先行投資と考えられます。意味のあるお金の使い方が身についている富裕層らしい考え方と言えるでしょう。
一方で、インターネットショッピングの利用が増えた、フードデリバリーサービスやケータリングの利用が増えたという回答もあるところには、親近感を感じますね。
表3.コロナ禍での消費や生活の変化
(企業のオーナー経営者における富裕層・超富裕層)
出所:「NRI富裕層アンケート調査」(2020)