J-REIT市場の堅調を支える海外マネーと日銀
このように不動産市況が低迷すれば、当然のことながらJ-REIT市場も冷え込むのが普通です。
ところが直近の値動きで気になるのが、J-REIT市場が意外にも堅調に推移していることです。東証REIT指数はコロナショックの影響を受けて2020年3月19日には1138ポイントまで下落したものの、そこから順調に上昇して、2021年4月21日時点では2073ポイントをつけました。まだコロナショック前の水準には到達していないものの、特に今年に入ってからは堅調に上昇トレンドを続けています。
4月17日の日経新聞朝刊、マーケット総合面では「REITに海外マネー」という見出しが出ていました。記事によると、「海外勢を中心にして投資マネーが入り始め、出遅れていたオフィスREITへの見直し買いに加え、世界で広がる物価上昇への懸念が市況を後押ししている」ということです。
海外からの投資マネーが入り始めている理由としては、やはりマイナス金利の影響が大きいと思われます。新型コロナウイルスの感染拡大による景気の落ち込み懸念から、日本や欧米諸国は金融緩和政策を取っています。金融緩和ですから、金融市場にマネーが過剰に供給されています。そのため、金融市場に供給されたマネーの一部が運用先を求めてJ-REIT市場にも入ってきたと考えられます。
それとともに、日銀によるJ-REITの買い入れによる影響もある程度ありそうです。2020年の1年間を通じて日銀が買い入れたJ-REITの総額は1147億円で、2019年の528億円に比べて倍額以上になりました。
日銀のJ-REIT買い入れはすべての銘柄を対象にしていません。一定の格付けを取得していて、かつ市場での流動性がある程度あるものを買い入れるというルールがあるので、例えばスポンサー企業の信頼度が高いJ-REITがメインの買入対象になります。
東証REIT市場で最も古くから上場されている「日本ビルファンド投資法人」が典型で(主なスポンサー企業は三井不動産と住友生命)、昨年10月末以降は堅調に値上がりし、その値上がり率は4月21日までで36%にも達しましたが、昨年6月末時点で同社の発行済投資証券のうち9.28%は日銀が買い入れて保有している分です。上昇トレンドに乗った時期から見て、日銀の買い入れが直接、投資証券の需給に影響を及ぼしたわけではないと思われますが、現状、日銀の政策保有はバイ&ホールドなので、市場で流通している投資証券が減れば株価を押し上げる力が働きます。
ただこれから先、ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば徐々に金融は正常化へと向かい、日銀のJ-REIT買入額も徐々に減っていくはずです。それまでに不動産市況が回復していなければ、J-REIT価格の上昇余地も限られるでしょう。