3月23日に発表された、2021年1月1日時点を基準とした公示地価は、全用途(住宅・商業・工業)の全国平均が前年比0.5%のマイナスとなりました。昨年まで5年連続で上昇していましたから、6年ぶりの反落になります。

地価下落の要因は改めて言うまでもありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞です。緊急事態宣言の発出によって飲食店は時短営業を強いられ、コロナ前に比べて街を歩いている人、夜遅くまで会食している人の数が減りました。県境を跨いだ人の移動も抑制され、ホテルの稼働率も大幅に落ち込んでいます。そして、在宅勤務を導入した企業が増えたため、オフィスビルに対するニーズが大幅に落ち込みました。

株価と比べても回復が鈍い不動産価格

新型コロナウイルスの感染拡大が地価にネガティブな影響を及ぼすことがはっきりした以上、気になるのは今後の動向です。3月21日、政府は2カ月半にも及んだ2回目の緊急事態宣言を解除しましたが、その後、再び感染拡大の勢いが強まり、4月25日には3回目の緊急事態宣言が東京など4都府県に発出されました。

2020年1月1日から2021年1月1日までの年間を通じた公示地価の動向を、前半と後半で分けて見たデータが、国土交通省発表の「地価公示の概要」に記載されています。前半は2020年1月1日から7月1日まで。後半は2020年7月1日から2021年1月1日までです。

この間の公示地価の変動率を全国ベースで見ると、住宅地は前半が0.4%の下落で後半が0.2%の上昇ですから、年間を通じて0.2%のマイナスになりました。また商業地は前半が1.4%の下落で後半が変わらなかったため、年間を通じて1.4%のマイナスとなりました。つまり住宅地も商業地も、前半期に下げた分を後半期で取り戻せていないのです。

これは不動産に限ったことではなく、株価もそうなのですが、一度大きく下落した後にはリバウンドという回復局面が訪れます。ちなみに日経平均株価は2020年1月6日が2万3204円で、同年3月19日には1万6552円まで下落しましたが、7月1日には2万2121円まで回復し、さらに2021年1月4日には2万7258円まで上昇しました。

このように、株価は一時的に大きく下げたものの、2020年の後半期にはコロナショックで下げた分を取り戻しただけでなく、プラスが生じています。金融資産と実物資産の違いはありますが、投資対象という点で両者を比較した場合、株式に比べて不動産の出遅れが目立っているのです。

新型コロナウイルスの第4波襲来が懸念される中、これから先の不動産価格の動向が気になります。普通に考えれば、商業地やホテル、オフィスビルの不動産価格はしばらく厳しい状況が続きそうです。