2020年までに残高が急拡大した債券ETFのメリット

次に世界のETFのトレンドを見ていきます。ICI(Investment Company Institute:米国投資信託協会)の統計によると、ETFの運用資産額で世界全体の約7割を占める巨大市場アメリカにおける2021年2月末時点のアセットクラス別の残高は、株式型が最も多く8割弱、次いで債券型が2割弱、残りがその他コモディティ等となっています。

この中で近年、シェアを大きく拡大したのが債券ETFです。これには複合的な要因が考えられ、投資家の高齢化に伴ってより安全な資産である債券への投資ニーズが増したことや、債券ETF自体のバリエーションの増加により投資家の選択肢が広がったことに加え、債券ETFの利用しやすさが注目されているという見方もあります。

アメリカ市場では売買代金の上位に債券ETFが多く含まれますが、個別債権だと流動性が低く投資しにくい弱点があるのに対し、個別債券を集めてETFにすることで流動性が生まれ、その点が利用しやすさとして投資家に認められて残高が伸びたということです。特に2020年3月に発生したコロナショックにおいて、株価の下落やクレジットスプレッドの拡大で市場が凍結してしまった中で、債券ETFは売買の即時性や価格の透明性が提供でき、それ以来、世界的に債券ETFの活用への注目が高まったとも言われます。

一方、2021年に入り、アメリカではワクチン接種の進展等への期待感から経済見通しの不透明感が後退するとの見方もあり、債券ETFの資金流出が続いている状況ですが、過去数年間というタームで見ると債券ETFの市場規模は大きく拡大しています。こうした背景もあり、2020年以降、東証ETF市場においても債券型ETFのラインアップが徐々に拡充されています。