相談者 のプロフィールとお金データ

【山本和子さん(仮名)プロフィール】 55歳、パート。自営業の夫(63歳)、娘(24歳)、孫(0歳)と暮らす。三重県在住。
【寄せられたお悩み】  「娘が結婚し、妊娠。孫の誕生を心待ちにしていたのですが、出産前に離婚して戻ってきました。 娘も働いていましたが、育休を取ることなく産休後に退職してしまいました。保育園の空きがないため、働きに行くことも難しそうです。 今まで、娘の学費や結婚費用の援助を払うのに精一杯で、ほとんど貯金ができていませんでした。これから老後のための資金を作らねばと思っていた矢先、このようなことになり困っています……。 娘の生活を援助しつつ、老後資金を作るにはどうすれば良いのでしょうか。できることなら、孫にも残せたらとも思います。 夫は自営業で収入も不安定ですが、今のところ元気で仕事を続けています」
 【お悩みの論点】 ①想定外に出費が増えている中での老後資金作り…どうすれば? ②できれば孫にも財産を残したい

資産状況や月々の収支内訳

【資産状況】 世帯の金融資産額:200万円 内訳 預貯金:200万円 ※ここには含めてないが、年金保険300万円もあり
【収支】 <収入> ・世帯の毎月の手取り収入:33万円……夫20万円(自営業のため、家計に入れる分の平均額を計上)、相談者13万円 ※夫・相談者共にボーナスなし <支出> ・毎月の支出:33万円 (詳細以下)

※1 :固定資産税分を月換算している
※2 :最近は、娘が戻ってきて何かと“入り用”なのを貯金を削ることでまかなっているため、5万円ほどしか貯金に回せていない

※編集部注:以下、相談者を和子さん、相談者の娘を恵美さん(仮名)とします。

資産形成に踏み出す前に知っておいてほしい「社会保険」を活用するということ

恵美さんは、育児休業は取らずに退職をされました。きっとご理由はおありでしょうが、小さな子どもを抱えての生活は想像以上に大変です。

(最初から、たられば話となって恐縮ですが……)もし、退職せず育児休業を取っていれば、休業中に育児休業給付金が支給されたのです。

産休後6ヶ月間まで67%、以降1歳になるまで50%支給されます。元の給料の半分であっても、“働けなくても収入がある”というのは心強いことです。保育園に入所できない場合など一定の理由がある場合、最長2歳まで延長ができます。

しかも、給付金には課税されませんし、社会保険料の支払いもありません。支払わなくても健康保険証は使えますし、休業中も休業前と同額の年金保険料を払っていることとされて将来の年金に反映されます(いわゆる、免除というものです)。

今、少なくとも和子さんはお悩みを抱えている状況にあり、こうした社会保険について「調べて、活用する」という意識があれば状況はいくぶん良かった可能性があります。これからはぜひ社会保険を“活用する”意識を持っていただけるといいと思います。

さて、現状でどのような支援を受けることができるでしょうか? 雇用保険と児童扶養手当が考えられます。それぞれ解説していきます。

雇用保険

雇用保険の基本手当(失業給付)は、働ける状態で求職活動をしていることが条件ですし、給付金を受けられるのは、原則、離職の日から1年以内です。

しかし、妊娠や出産で引き続き30日以上働けない場合は、離職の翌日から最長4年以内まで延長することができます。

延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請はできますが、受給期間中に期限が来てしまうと本来もらえる給付金ももらえなくなってしまいますので、早めに申請しましょう。

児童扶養手当

ひとり親の場合、児童手当に加えて児童扶養手当も受けられます。

令和2年分は一人目の全部支給43160円、一部支給:43150円~10180円ですが、所得により制限があります。

例えば、前年度の扶養親族がゼロの場合、全部支給になる所得上限は49万円、一部支給になる所得上限は192万円です。

しかし、たとえ恵美さんの所得が制限内であったとしても、同居の扶養義務者(もっとも所得がある人)の所得が236万円超の場合は支給停止になります。同居の場合、世帯分離していても、実際に別生計でないと世帯分離とされず、保育料も合算されて判定されます。

世帯分離とされる要件や、分離したことにより受ける影響についは、お住まいの市区町村にお問い合わせ下さい。

また、児童扶養手当を受けられる場合は、ひとり親家庭等医療費助成制度の対象になります。通常の子ども医療費助成制度は、子どもの自己負担分が助成されますが、ひとり親家庭等医療費助成制度は、親の自己負担分も助成されます。児童が18歳の3月31日までの期間で支援を受けられます。

その他、ひとり親を対象にした支援や低所得者に対する支援、国民健康保険料や国民年金保険料の減免や免除について、お住まいの市区町村に相談されると良いでしょう。

「孫に財産を残したい」には、ジュニアNISAがおすすめ

和子さんご夫妻は毎月11万円の貯金ができていたものの、恵美さんが戻ってきたら毎月の貯金額は5万円程に減ってしまったとのこと。さらに、老後が心配でありながらも、お孫様にも何か残してあげたいとのこと。

現在預金として所有する200万円、これはいざと言うときの生活防衛費としてそのままにしておきます。

貯金できる5万円をどう分配するかを考えます。

和子さんはまずiDeCo(イデコ)を、そしてお孫様名義でジュニアNISA(未成年者少額非課税投資制度)を考えられてはいかがでしょうか。

ジュニアNISAは20歳未満の方が年間80万円まで、投資した年から最長5年間非課税で運用できます(口座の運用管理は、原則として親権者や2親等以内の親族が行います)。

2023年で制度が終了しますが、終了するのは投資可能期間(商品を購入することができる期間)で、ジュニアNISA口座内にある資産については、5年の非課税期間後に継続管理勘定にロールオーバー(移管)することで、20歳になるまで非課税で保有し続ける事ができます。ロールオーバーする時に資産の評価額が80万円超えていても、全てを継続管理勘定に移すことができます。

元は、お子様やお孫様の将来に向けての資産作りのための制度ですので、18歳未満で払い出す場合は、それまでの運用益に遡って課税され、使用していたジュニアNISA口座が廃止されるという「引き出し制限」がありました。

しかし、2023年のジュニアNISAの制度廃止に伴い、2024年1月1日以降は、18歳未満で引き出す場合も、遡って課税されることはなく非課税のままで引き出しができるようになります。ジュニアNISAの対象となる商品は、株式投資信託、上場株式等(上場株式、ETF、REIT等)ですが、金融機関によって買える商品が異なります。

運用するなら、バランス型ファンドの積立でリスク分散を

では、どんな商品で運用したら良いのでしょうか。

投資未経験の和子さんの場合、投資信託での運用をご検討されてはいかがでしょうか。

どこの国のどの銘柄を、いつ買うと良いのかは分かりません。特定地域の特定銘柄が上がる時期を予測するのは難しいことです。投資するタイミングが合えば大きく資産を殖やすことができますが、反対に外すと大きく資産を減らしてしまいます。

しかしながら、投資信託を積立購入するということは、「資産分散」「地域分散」した株式や債券を、毎月一定額で「時間分散」して購入することで、値下がりのリスクに対応する事ができます。値が下がる時は、同じ資金で多くの商品が買えるメリットもあります。

また、NISA口座は買った時点で非課税枠を使ってしまうことからも、バランスファンドを毎月一定の日に自動的にただひたすら買っていく方法により、価格の変動を気にすることがなく資産を積み上げられます。バランスファンドとは、株式や債券といった複数の資産を併せ持つことができる、より分散の効いた投資信託です。

迷ったら、「つみたてNISA」で運用できる商品から選ぶと良いでしょう。手数料も安く、初心者が資産形成をするのに適した商品が選ばれています。

ジュニアNISAに毎月3万円、iDeCoに毎月2万円で投資を始めよう

2023年にジュニアNISAの制度は廃止になりますが、非課税で運用を続けることができます。今のうちに元金を入れておいて、長期で運用し、お孫様が必要なタイミングで使うようにすることができます。

例えば、ジュニアNISA口座で投資信託を月3万円、2年6ヶ月、毎月購入するとします。

3%で運用しながら積み立てると2年6ヶ月後は約93万円になり、さらにこれをこのまま毎年複利で非課税運用し続けると、15年後には約144万円、17年後には約153万円になります(必ずこうなるということではありません。3%で非課税運用ができた場合の金額です)。

よって、お孫様へは月3万円ほど3年間、ジュニアNISAに和子さんやご主人様から贈与します。年間36万円≦110万円となり、贈与税は掛かりません。

そして、和子さんは企業年金がないので、iDeCoの掛金を23000円/月にまでできます。恵美さんが再就職されるまでは掛金20000円/月で所得控除を受けましょう。

そして恵美さんが再就職し、支援の必要がなくなったら、和子さんはiDeCoにあと3000円の増額、さらに残りをつみたてNISAで運用しましょう。

年金の繰り下げ受給も検討の価値あり!

和子さんのご主人様はもうすぐ年金支給年齢になりますが、自営業であるため年金が基礎年金部分しかなく、このまま年金生活になってしまうのは心細く思われます。

ただ、幸いなことに、健康面に不安はなく、日々元気に働かれているとのこと。できるところまで国民年金の受給を繰り下げましょう。1ヶ月繰り下げると0.7%年金額が増えます。70歳からの受給にすれば年金額が1.42倍になり、その額が生涯続きます。

和子さんご自身は厚生年金に加入です。できるだけ長く働き、年金を増やすことを考えたいですね。

可能な限り長く働き、できるだけ頭も身体も健康でいること。医療費が掛からないのが理想です。そして、非課税制度を利用して資産形成をして、できるだけお金にも長生きしてもらうことがポイントです。

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まとめ
●雇用保険や児童扶養手当について、調べて手続きを進めよう
●iDeCoとジュニアNISAなら、老後資産形成をしつつ、孫にも財産が残せる!
●年金繰り下げ受給も検討してみよう