「ESG投資家」としても近年、世界的に注目を浴びる

その一方で、大切な年金資金の運用の割には株式のウェイトが高すぎるのではないか? といった指摘があるのも事実。

というのも、同じく年金資産を運用する企業年金の間では、リーマン・ショック以降、株式の配分比率を引き下げる動きが顕著で、足元では2割程度まで減少しています※。

※ 企業年金連合会が実施した企業年金実態調査(2019年度)によると、国内企業年金の株式投資の割合は国内株式が9.1%、外国株式が12.1%にとどまっている。

しかしながら、GPIFは2014年度に資産配分構成を大きく見直し、株式の割合を大幅に増やしているのです。背景には、世界的な金融緩和による超低金利環境が続いていて、債券中心のポートフォリオでは期待する収益獲得が難しくなってきたことに加え、「ユニバーサルオーナー」としての使命を果たす狙いもあると言えるでしょう。

ユニバーサルオーナーとは、「資本市場を広くカバーする投資家」と言い換えることもできます。つまり、「クジラ」にも例えられる巨大年金投資家であるGPIFは、株式指数を通じて日本の上場企業のほとんどすべてに投資していて、さらに主要な海外企業の株式・債券も保有する、典型的なユニバーサルオーナーであるというわけです。

ユニバーサルオーナーである以上、個別企業が中長期的に成長していくことも重要ですが、それよりも重視することは日本経済全体の成長であり、世界経済全体の成長なのです。しかも、超長期の視点で年金運用を行う立場であることを踏まえると、短期的な利益よりも数十年先、さらに100年先をも見据えた持続的な成長にも配慮する必要があるのです。

そうした狙いもあり、GPIFでは株式を黙って持ち続けるだけではなく、「ESG」に配慮したさまざまな工夫をしています。その代表的なものが「持ち方」の工夫で、GPIFではESGの取り組みが優れている企業を評価し、オーバーウェイトするESG重視型の指数を採用して企業への投資を行っています。さらに委託先の運用会社を通じて、投資する企業の経営陣との建設的な対話にも積極的に取り組んでいます。株式投資のみならず、債券やその他資産の領域でも巨額の資産を保有するユニバーサルオーナーとしての責任を果たすべくさまざまな活動を行っていて、今では「ESG投資家」として世界的に注目される存在となっています。


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ともすれば四半期ごとの運用実績にばかり目が向かいがちですが、100年先を見据えた超長期投資家という視点でGPIFをとらえると、新たな一面も見えてくるはず。GPIFではウェブサイトでさまざまな情報を開示していますので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

なお記事中に登場した、「2020年度第3四半期運用状況(速報)」もご覧になれます。