「将来、何らかの収益が期待されている」のが「資産」

「貯蓄から資産形成へ」「貯蓄から投資へ」という呼びかけが長年、行われてきたにもかかわらず、いまだに個人金融資産の内訳が現金/預金偏重型であることの理由として、資産形成に対してある種の誤解があるのではないかと思われます。別な言い方をすると、「資産」という言葉が何を意味しているのかが今ひとつ明確でないまま、とにかくお金を貯めることが資産形成であると考えているのかもしれません。

もちろん現金も預金も資産の一部ではあります。が、会計用語としての資産の意味は、「将来、企業に何らかの収益をもたらすことが期待されている経済的な価値」であると考えられています。

「将来、何らかの収益をもたらすことが期待されている」という部分がキモです。現金は、例えば1000万円をタンスの奥に後生大事に仕舞っておいて10年が経過したとしても、1000万円のまま。当たり前のことではありますが、ただ現金のままでは何の収益も生み出しません。

預金は一応、「利息」という収益を生みますが、現在の金利水準は極めて低いのが難点です。大手銀行の定期預金利率は、預入期間の長短、預入金額の多寡に関係なく、年0.002%程度です。1000万円を10年間預けたままにしても、受け取れる利息はわずか2000円です。つまり、現金や預金のみのポートフォリオでは資産形成にならない、ということになります。

配当や分配にも注目し、コツコツ投資で資産形成を

だからこそ、資産形成に投資が必要なのです。例えば株式の配当利回りランキングを見てください。全市場ベースで配当利回りが4%超の銘柄数は250にも達します。

もちろん、配当利回りが高ければ良いというものでもありませんが、業績が安定していて、4~5%の配当利回りが得られる株式への投資は、資産形成の対象として高い魅力を持っています。

例えば三菱商事の配当利回りは、1月20日の終値ベースで5%です。もちろん株式投資ですから、投資した時に比べて株価が値下がりすることもあるでしょう。でも、株価が下落すれば配当利回りは上昇するので、安いところを丹念に拾い続けることで、配当利回りをさらに向上させることもできます。

このような投資は長期の時間軸で考える必要があります。そのため、経営が安定しており、かつ配当利回りの高い企業が対象になります。もちろん遠い未来のことは分かりませんが、三菱商事の経営が20年後まで持たずに倒産してしまう確率は、そんなに高いとは思えません。

安定した利回りという点では、J-REITも資産形成のツールとして高い魅力を持っています。東証に上場されている62銘柄の平均分配金利回りは4%前後を維持しています。投資信託の中にも、安定した利回りが期待できるものは少なくありません。

将来にわたって相対的に高い配当や分配が期待できるものをコツコツと買い続け、30年後、40年後、相応にまとまった投資額になれば、仮に公的年金の支給額が減額されたとしても、それを補えるだけのキャッシュフローが得られるはずです。まさにそれが「経済的な価値」であり、本来の意味での「資産」だと言えるのではないでしょうか。