相談者のプロフィールとお金データ

【前沢拓也さん(仮名)プロフィール】 30歳の独身男性。千葉県で一人暮らし。1年半ほど前にネットで見て興味を持ち、つみたてNISAを開始。一方で、勤務先の会社が選択制企業型DCを導入しているが、支給されるライフプラン手当について、どのような選択をしたら良いか迷っている。
【寄せられたお悩み】 「会社が選択制企業型DCを導入しており、ライフプラン手当が支給されていますが、DCに拠出すべきか迷っています。会社からは、掛け金は給与・賞与からの切り出しとなるため、将来の厚生年金が減ってしまうと聞いています。一方で、社会保険料や税負担の軽減、運用益が非課税、受取時にも控除がある点がメリットだそうです。 結局、DCに拠出して目先の社会保険料が減らせるなどのメリットを得るのと、拠出せずに社会保険料などをこれまでどおり負担する反面、将来の厚生年金の受取額を維持するのと、どちらが得なのでしょうか?」 
【お悩みの論点】 ①選択制企業型DCのライフプラン手当について、メリット・デメリットが知りたい ②ライフプラン手当をDCに拠出すると、将来の厚生年金の受取額が減ってしまうのか ③運用益非課税、社会保険料負担減、受取時所得控除などのメリットと比べ、どちらが得なのか

資産状況や月々の収支内訳

【資産状況や月々の収支内訳】 金融資産額(運用中の投資額と預貯金を合わせた金額):300万円
内訳 預貯金:250万円 投資信託: 50万円 ※つみたてNISAで「ひふみプラス」を運用中
収支 <収入> ・毎月の手取り収入:30万円 ・手取りの年収:360万円(※賞与は業績連動のため含まず) <支出> 30万円(詳細以下)

支出について、前沢さんよりコメント

※1…「一人暮らしのため、外食や飲み会が多いですね」

※2…「趣味のバンド活動のスタジオ代や機材費などです」

※3…「あと12年ほど返済が残っています」

※4…「1年半ほど前から始めました」

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勤務先が選択制企業型DCを導入しているが、ライフプラン手当の選択をどうしたら良いかというご相談ですね。全般的に言えることですが、制度には必ずメリットもあればデメリットもありますので、確認した上でご自身の将来プランなども考慮しつつ、どうすべきかを判断していきましょう。

ライフプラン手当のメリット・デメリットは?

そもそも選択制企業型DCとは、従業員の給与を減額した上で、減額部分を「企業型DCの掛金として拠出する」もしくは「これまでどおり給与として受け取る」ことを従業員が自らの意志で選択することができる確定拠出年金制度です。実際には、事業主掛金(ライフプラン手当、ライフデザイン手当等)と、給与として支給する現金の割合を変えた複数の選択肢が用意されているケースが多くみられます。選択にあたっては制度のメリットとデメリットをよく理解することが大切です。

仮に企業型DCへの拠出を選択した場合は、拠出分の金額は給与とはみなされないため、結果としてその分、所得税、住民税が減るメリットがあります。また会社員の場合、毎月給与天引きで厚生年金、健康保険といった社会保険料を支払っていますが、これらの社会保険料の金額は、給与額に応じて区分される等級ごとの標準報酬に保険料率を掛けて計算されています。つまり給与が下がれば等級も下がるので結果、社会保険料も安くなります。

前沢さんは30歳ですので、今加入すると、30年程度D Cに加入できることになり、税金や社会保険料負担が合計数百万円単位で軽減されるでしょう。税金や社会保険料の負担減などを考えると、給与で受け取るよりも企業型DCに掛金を拠出した方が良さそうだと感じると思いますが、デメリットもあります。

社会保険料の金額が安くなるということは、将来受け取る年金の金額や社会保障の給付額が少なくなるのです。国民年金には影響はありませんが、老齢厚生年金をはじめ、障害厚生年金、遺族厚生年金などの年金が減ったり、ケガや病気になって会社を休む場合に健康保険から支給される傷病手当金、また雇用保険から支給される、失業した際の失業給付や介護で会社を休む際の介護休業給付金の給付額も減ってしまいます。

30年間で約200万円の負担減だが、将来年金は約120万円減ることに

では、仮に前沢さんが企業型DCに掛金を拠出することを選択した場合、税金や社会保険料はどれくらい安くなるのでしょうか?

DCの掛金は、月額5万5000円(他の企業年金制度を併せ持つ企業の場合には2万7500円)を上限として、従業員が掛金の金額を選択します。前沢さんの家計の状況を拝見すると、突出して高いのが食費の8万円です。他は特に無駄遣いをしている印象もありませんし、毎月の貯蓄もつみたてNISAを活用し、きちんと資産形成をされているのは素晴らしいことです。優先して家計にメスを入れるとすると、食費になるでしょう。1人暮らしのため外食や飲み会が多くなってしまうのも分かりますが、家飲みや自炊などを取り入れることによって、2万円程度は削減できるのではないでしょうか。

そこで無理なく拠出できる掛金の金額を2万円とし、前沢さんのプロフィールから年齢30歳、独身、年収500万円(税込)としてざっくりと試算してみると、1年間の所得税の節税金額は1万6000円、住民税の節税金額は1万5700円、社会保険料の負担減は3万4600円となり、合計で年間6万6300円となります。30歳から60歳まで掛金の拠出を続けたとすると、30年間で198万9000円の負担減となります。

一方、前述したとおり年金や社会保障の給付額も少なくなりますが、大きな影響があるのが年金でしょう。では、老齢厚生年金の金額はどれくらい減ってしまうのかを見てみましょう。

賞与は業績連動とのことですので、今回は賞与を考慮せずに企業型DCに毎月2万円拠出したことにより、毎月2万円給与が減った場合で試算してみます。前沢さんの年齢の場合、次の式で厚生年金の報酬比例部分(年額)の概算を確認できます。

標準報酬額×5.481/1000×加入月数

30歳から60歳まで30年間企業型DCに加入し、その間、給与が一定だとすると「2万円×5.481/1000×360ヶ月=3万9463円」となり、65歳からの公的年金の受給金額が年間約4万円も減ってしまいます。同じ30年間という時間軸で考えて仮に95歳まで生きるとすると、約120万円も公的年金が減ってしまうわけです。万が一、障害者となった場合に支給される障害年金も同様に減額されてしまいます。

将来のライフプランを見据えて検討を

これまでお伝えしたとおり、選択制DCにおけるライフプラン手当の制度にはメリット・デメリットがあります。ですからなかなか判断が難しいところではありますが、選択にあたっての重要なポイントに「運用」という観点もあります。

毎月2万円を30年間拠出すると計720万円になりますが、仮に毎月2万円を平均利回り3%で運用できれば約1165万円になります。D Cで運用した場合には、大きく増える可能性があることに加えて、運用中の利益は非課税となります。

また基本的にDCは60歳から受け取ることができますが、受取時に一時金として受け取る場合には「退職所得控除」が適用となり、税制優遇の恩恵を受けることができます。一時金の金額によっては非課税で受け取ることも可能です。

現役時代の負担を減らしながら、将来の年金の準備をするという観点では、DCに拠出するのも良いと思います。ただし気をつけなければならないのは、DCは基本的に60歳まで引き出すことができないということ。大きく増える可能性がある一方で、運用次第では将来の受け取り額が減ることもあります。前沢さんは30歳ですので、今後、結婚やお子さんの誕生、転職などライフスタイルや働き方も変わる可能性があります。ライフスタイルが変化する時期には、お金に柔軟性を持たせておいた方がよいという判断もあるでしょう。

今回は選択制DCにおけるライフプラン手当のメリット・デメリットを中心にお伝えしましたが、大切なのは前沢さんの将来プランです。これを機に考えていただき、今後を見据えた上でどう選択するかを検討してみてくださいね。