保有する投信の「評価損益」に着目して判断していく方法

現時点で評価“益”が出ている場合

幸い、2020年12月時点のマーケット環境はかなり良好な状態ですから、2017年というスタート時期から想像するに、武田さんも売却したら利益が出る可能性は高いでしょう。ただし、この先はさすがに読めず、投信の値段(基準価額)も必ず上がり続けるとは限りません。

このまま価格が上がり続けると思う場合はそのまま保有がよいでしょう。反対に上がり続けるわけではないと感じるのならば利益を確定させたほうがよいということになります。

いずれの選択肢を取るべきかについては、後で出てくる「精神的に『どちらがマシか?』で判断する方法」も参考にしてみてください。
 

現時点で評価“損”が出ている場合

一般 NISA口座で積立をした場合の損益分岐点は、平均取得価格が基準になります。評価損の状態になっているのであれば、そのまま一般NISA口座内で運用を継続し、回復を待つのもいいでしょう。

積立を継続し、平均取得価額を徐々に低くしていくことで、評価損を減らせる可能性もあります。ただし、翌年も一般NISA枠を使って積立を継続してしまうと、その年はつみたてNISAを併用できないのは前述の通りです。もっとも、これはあくまで損失確定の先送りとなります。

精神的に「どちらがマシか?」で判断する方法

一方で、保有する投信を売却した後の「心理状態」に着目して判断する方法も考えられます。具体的には、「売ってからの値上がり」「売らずにいて値下がり」……どちらがより“後悔”をしそうかで判断します。

「売ってからの値上がり」に後悔するタイプ

このタイプの方は長期的に持ち続ければいいのでシンプルです。一般NISAはそのまま運用を続けます。

そうは言っても今のうちに少しでも利益を確定させたい気持ちもあるでしょう。その場合は一部を売却しておけば、安心も得られるのではないでしょうか。

さらに、「クロス取引」という方法もあります。ここでいうクロス取引とは、一般NISA口座で保有していた投信を売って、同じ投信を同日に特定口座内で買い付けることです。クロス取引のメリットは、いったん利益を確定させ、一般NISAの出口を気にしなくてもよくなる点と、特定口座で長期投資を継続できることです。デメリットは、さらに大きく基準価額が上昇した時には、もう非課税メリットが受けられないということです。

資産運用ではむしろ利益は課税されるのが“通常”と割り切ることも必要です。それでも、仮に特定口座内の投信の基準価額が値下がりする局面があっても、長期投資が前提であれば気にする必要はありませんし、当初一般NISA口座で購入したときの買い値さえ下回らなければ、実質的に損失にはなりません。

「売らずにいて値下がり」に後悔するタイプ

「あの時、売っておけばよかった……」と後悔する方は少なくありません。このようなタイプの方であれば、まずは少しでも利益が出ているうちに売却してしまうのが第一の選択肢になるでしょう。ここでいったん一般NISAでの運用益+元金は現金化し、翌年からのつみたてNISAで積立を始めましょう。

ただし、一度に残高の全てを売却して残高がなくなってしまうと、次のつみたてNISAでの残高が増えるまで時間がかかりますから、貯蓄計画のペース配分が狂ってしまいます。一般NISAの非課税期間の終了までにまだ数年あります。リバランスなどしながら、投信残高を一気に減らしすぎない工夫も必要になるでしょう。また、あまり細かく考えすぎてしまうと、資産管理が大変になってしまいます。なるべく早く「長期投資」に慣れていただくとより良いでしょう。

***

“少額投資非課税制度”とはいえ、一般NISAの出口リスクは資産残高の増加に比例して大きくなっていきます。制度が恒久化されていないため※、最初は些細で小さな悩みだったことが、武田さんのように後々大きくなるのは当然です。
※2024年から新NISAがスタートしますが、新規に投資できる期間は2028年まで。その後の制度の延長等は未定です。

今回は現在所有する一般NISAの投資信託をどうするか? に絞って、考え方とパターンをお示しました。武田さんもご自身の性格を考慮し、最も後悔の少ない方法を選ばれることを祈っています。年末に向けて、じっくり考えてみてください。