争続になりやすいケース2 生前贈与で子どもの間に大きく差を付けられている

現在50代の皆さんの親は“年金逃げ切り世代”ですから、比較的優雅なリタイアライフを送っている方が多いのではないかと推察します。相続税対策として生前贈与を受けた読者もいることでしょう。

生前贈与が相続税対策に有効なのは確かですが、やり方を間違えると、子ども同士の争続の引き金になることがあります。

一番の禁じ手は、子どもの間で大きく差を付けることです。

仮に2人兄弟の長男の息子が成績優秀で有名進学校から医学部へと進んだとします。裕福な親は“自慢の孫”への援助を惜しまないでしょう。次男のほうには子どもがいないとしても、親が甥にばかりお金をつぎ込むことを次男は面白く思わないはずです。

こうした日常的な不満や疑念が表出するのが相続の場です。この兄弟の取り分がイーブンだとしたら、次男が「甥への生前贈与を全く考慮しないのは不公平だ」と主張してくる可能性は大いにあります。

相続人同士であれば、一方への生前贈与は「特別受益(複数の相続人がいるケースで、ある相続人が亡くなった人から生前贈与や遺贈によって受けた利益のこと)」と見なされ、利益を受けた相続人はその分だけ相続できる財産が減らされます。

しかし、上のケースだと長男の息子は親の相続人ではないため、特別受益には当たりません。学費の援助は“もらい得”となるわけで、次男は気持ちのやり場を失います。

このようなケースでは、次男は親が元気なうちに自分の思いを伝え、何かしらの穴埋めをしてもらっておく必要がありました。相続のスタートボタンが押された後では、もう遅いのです。