「買いだめ」や「消費先の制限」がエンゲル係数を上昇させた
2020年1月、国内初の新型コロナウイルス感染者が発表された。直後の2020年2月には「巣ごもり消費」とも呼ばれる消費行動で、外出自粛要請に備えた食料品の買い込みも行われた。食料品に費やすお金は当然多くなったのだから、エンゲル係数も急上昇したわけだ。
飲食店が売上低迷に悩むなか、スーパーなどの食料品を扱う店舗の売れ行きはむしろ良くなったと言える。
巣ごもり消費による買いだめで食料品全体の需要は自然と上がったため、特売などを通じて消費を促す必要はなくなった。さらに売場での感染を避ける目的で入店規制を実施した店舗も多く、結果として食料品の平均価格が上昇し、エンゲル係数も上がったと考えられている。
また、外出自粛要請によって自宅に居る機会が増え、レジャーや趣味などに費やすお金も減少した。消費先がスーパーでの買い物やネット通販などに限られたことも、エンゲル係数の上昇を促したと言われる。
職種によってはコロナ禍で収入が減少し、大幅な節約を強いられた家計もあるかもしれない。生活に必要な食費を維持しながらほかの支出を抑えた結果、エンゲル係数が上がらざるを得なくなったケースも考えられるだろう。
理想とされるエンゲル係数は20%程度、では投資は?
ここまでエンゲル係数が変動する要因を中心に紹介してきたが、理想的な値はどの程度なのか。
結論から言うと、20%程度だと言われている。つまり毎月の支出のうち1/5程度が食費だと理想的なわけだ。しかし、世帯人数や居住地域、ライフスタイルなど細かな条件によってエンゲル係数の目安は異なる。そのため世帯ごとに適切な目標値を見極める必要があり、あくまでも前述した20%という値は目安として考えておきたい。
ではエンゲル係数、つまりは毎月の支出に占める食費の目安が20%程度だとすると、貯蓄・投資の割合はどのくらいが理想なのか。
エンゲル係数の目安と同じように収入や運用目的、さらには現在の貯蓄額によって異なるものの、こちらも20%が理想とされている。さらにこの20%をどの程度リスク性資産(=投資)に回すかは、その人のリスク許容度や投資経験などでも変わる。
ちなみに、マネースクールを展開する「ファイナンシャルアカデミー」が行った調査によると、収入の20%以上を投資へ回す人は1年で100万円以上の資産増を実現している、という興味深いデータがあることも申し添えておきたい。
現在の生活費や資産状況、ライフプランなども考慮したうえで、今回紹介した食費の割合はもちろん、収入のうち何割を投資に向けるかもあわせて考えてみたい。