投資額の調整によるリスクコントロール
資産運用にはリスクが伴います。資産が減るリスクを受け入れてこそ、資産が増えるリターンを享受できるわけです。かつてのリーマンショックやコロナショックといった金融危機や一時的な資産価格の暴落は今後も起こり得るので、私はいつもお客さまに対し、「一時的に資産が3分の2程度にまで減る可能性があることを覚悟してください」とお伝えしています。
これはつまり、1000万円を投じるとして「一時的とはいえ、あなたの1000万円が600万円程度に減るかもしれませんが、受け入れられますか?」ということです。坂本さんは考えた上で、それは無理だと答えました。しかし、その半分ぐらいの損失だったら許容できるというので、投資信託に投じる額は500万円としました。商品としては、長期的に好成績を収めており、長期投資の運用方針を掲げる歴史の長い米国株投信を選びました。
長期的な成長を期待できる分、株式資産はリスクが高めです。リスクを抑えるには、投資金額を調整するほか、債券などに分散投資する方法もあります。ただ、たとえリスクが低くても、期待リターンが低い投資対象にコストをかけて投資することにメリットをあまり感じません。資産分散でなく投資金額でのリスク抑制というご提案は、最もシンプルで効率的だと考えた結果でした。
坂本さんは、万一に備えて医療保険にも加入したいという希望もお持ちでした。実は私自身も、死亡保険や自動車保険といった自力で備えるのが難しい保険には加入していますが、医療費程度なら貯蓄と公的な健康保険で対応できるので、医療保険には加入していません。基本的に掛け捨ての保険は期待リターンがマイナスなので、保険料を支払うより投資に回した方が効率的だと考えるからです。