従来よりも柔軟な「金融サービス仲介」スキームの特徴

こうした既存の金融商品仲介スキームの課題を解決し、顧客の利便性を追求した柔軟な仲介スキームの活用を目指すために新しく設けられたのが、金融サービス仲介スキームである。

具体的には、前述の1点目の問題について、銀行・保険商品もワンストップで取り扱いたいという事業者に対しては、金融サービス仲介業者として登録をする際に、複数の業態の仲介業者として業務を営むことを同時に手続きすることが認められるようになった。

また、2点目の問題についても、金融サービス仲介制度においては「所属制」が採用されないこととなり、各仲介業者は、提携する証券会社等の金融機関からコンプライアンス業務に関する指導等を細かに受ける必要がなくなる。顧客のニーズに応じるために多くの証券会社等と提携したとしても、その対応の煩雑さを避けることが可能となったわけだ。

ただし、多様な金融商品・サービスの取り扱いを可能にし、顧客の利便性を高めることを目的にしたとしても、その結果として、顧客の利益を保護する機能が脆弱になってしまっては元も子もない。そのため、金融サービス仲介制度では、仲介行為の範囲として「代理」は認めないと制限を設けたり、取扱い可能な商品は高度な説明を要しないものに限定したり、事故で顧客に損害を与えた場合に備えるための保証金の供託が義務付けられたりといった新しい規定も設けられている。

個人向け資産運用サービスのさらなる充実の期待

金融サービス仲介制度の新設によって最も期待されるのが、オンラインでの総合的な金融商品・サービスの提供プラットフォームの登場と充実である。

例えば、Amazonのような総合的なマーケットプレイスでは、どこの金融機関の商品やサービスであっても、そこに行けばワンストップで利用することができるのが望ましいが、これまでの金融商品仲介スキームでは、複数の業態かつ数多くの金融機関の商品等を取り扱おうとすると、複数のライセンスや個々の金融機関それぞれによるコンプライアンス等の指導対応が発生し、そのような事業運営は現実的には困難であった。金融サービス仲介スキームを用いると、こうした問題は解決され、オンライン上の総合的な金融商品・サービスのプラットフォームの登場がぐっと現実的になる。

来年後半に施行されるまでに、どのような商品の取り扱いが金融サービス仲介業に認められるのか等を見定める必要があるが、個人向けの金融サービスがより利便性の高いものになることが期待される。