オフィスビルの需要が後退する一方で、進行する再開発事業

一方、東京都内では現在も再開発がいろいろなところで行われており、今後もオフィスビルが大量に供給されます。

例えば渋谷では、渋谷スクランブルスクエアのうち地上47階建ての東棟が2019年11月に開業しましたが、全体が完成するのは2027年です。虎ノ門エリアでは「虎ノ門ヒルズステーションタワー」をはじめ、虎ノ門2丁目に2棟の超高層ビルが建設される予定です。東京駅周辺では、八重洲から日本橋、茅場町にかけての再開発事業が進められており、地上61階建ての高さ日本一を誇るビルが2027年に完成します。そして品川エリアでは、品川ゲートウェイ駅を中心にして2024年には超高層ビル4棟と、大型低層ビル1棟が完成を目指しています。

東京都心のオフィスビルが大量に供給される一方で、働き方が急激に変わり、オフィスビル需要が後退しつつあります。オフィスビルの先行きが厳しいことは、J-REITの価格を見ても一目瞭然で、オフィスビル特化型では最も時価総額が大きい「日本ビルファンド投資法人」の投資口価格は、2月18日が89万4000円で直近のピークでしたが、コロナショックを受けて3月19日には55万5000円まで下落しました。その後は戻しつつありますが、9月18日の投資口価格は62万円で、コロナショック前の水準を取り戻せずにいます。

一般的に不動産業界では、「J-REITの今の相場は1年先の不動産市況を占う」と言われています。つまり現在のオフィスビル特化型J-REITの価格低迷は、オフィスビルの先行きに対する懸念がしばらく続くことを意味しているのです。