それぞれの利点と弱点
ここまでをまとめると、物価連動国債ファンドは「物価に直接連動するが、金利上昇には弱い」、金やREITは「局面によって効き方が変わる補完役」、IGOとクアトロは「複数の資産を組み合わせ、配分を運用者に任せる一任型」と整理できます。同じ「インフレ対策」でも、狙いと弱点は異なります。役割を意識して選ぶことが大切です。
「土台・防御・一任」の三層で備える
最後に、これらを組み合わせた資産運用の考え方を三つの層で整理します。
<土台> 土台は世界に分散した株式です。企業は長期的には価格転嫁を通じて物価上昇に対応できるため、購買力を守る中心は株式になります。低コストの全世界株式ファンドなどで、長期・積立で持つ方法が基本です。毎月一定額を積み立てれば、価格の高い時期と安い時期をならす効果も期待できます。
<防御> 防御として性格の異なる資産を少しだけ加えます。 物価連動国債、短期債、金などです。株式と債券が同時に下がる局面で、下落を和らげる役割を期待できます。ただし、役割は「防御」なので、比率は全体の一部にとどめます。「物価連動国債ファンド」、「国内債券ファンド(短期債券)」、「ゴールドファンド」などファンドとして防御する資産を組み入れることも可能です。
<ファンドの活用> 配分の判断を任せたい人は、「IGO」や「クアトロ」のような一任型を検討します。 自分で資産配分を決めて見直し続けるのは、意外に手間がかかります。その部分を任せる選択肢です。ただし、コストも相応にかかることに留意が必要でしょう。また、ファンドを購入する場合は、購入前に最新の月次レポートと目論見書で、実績・費用・資産配分を確認してください。購入前には、運用実績の期間、実質的なコスト、資産配分の中身、NISAで買えるかどうかの四点を確認することが重要です。
資産運用以外の備えも見逃せません。収入が物価に連動して伸びるよう、スキルや収入源を高めることも、有力なインフレ対策です。インフレによって金利が上昇していますから、ローンの利用は今まで以上に慎重に行う必要があります。超低金利時代に変動金利型の住宅ローンを組んだ方は、現在1.25%の政策金利が今後1年ほどで2%程度に上昇する見通しであることを前提に、返済期間、返済額が家計に占める割合、今後の収入見通しなどを検討の上で固定金利に切り替えるべきがどうかを検討する必要があるでしょう。
現在、大手銀行の住宅ローン金利は変動金利が1%台前半で、固定金利(10年)は3%台半ばになっています。政策金利が2%以上に上昇しないと見切るのであれば、既に3%台後半になってしまっている固定金利に切り替えると負担の方が大きくなるようにも見えます。固定金利に切り替えると確かに毎月の返済額が一定となり安心できますが、慎重に判断したいところです。
インフレ対策に「これさえあれば大丈夫」という正解はありません。分散し、コストを意識し、長く続ける。その地味な積み重ねこそが、物価高に負けない資産形成の近道です。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定のファンドの購入を勧めるものではありません。投資信託は元本保証がなく、損失が生じることがあります。
