ほかの選択肢と、それぞれの「癖」

■ピクテ「クアトロ」

「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド」(愛称:クアトロ)は、2013年12月に設定され、市場環境に応じて資産配分を機動的に変え、下落リスクを抑えつつ中期的に安定した収益をめざす「負けない運用」を掲げているファンドです。運用するピクテ・ジャパンが設定している「ピクテの投資カテゴリー」では「欲張らない投資」に分類され、2年以上5年以内で投資できる資金を対象とし、インフレ率程度のリターンで十分と考えている投資家に提供したいファンドとしています。

同ファンドの運用は、「株式」、「債券」、「オルタナティブ(ロング・ショート運用、金など)」に広く分散投資し、機動的に投資比率を変更するとともに、「キャッシュ・短期金融商品」への投資比率を大胆に大きく動かして運用しています。特長的なのは、「株式」でも「世界株式(AI運用型)」、「世界スタイル株式」、「世界インフラ関連株式」、「世界テクノロジー株式」、「世界素材関連株式」、「新興国株式」など性格の異なる株式をいくつも組み合わせ、「株式」の中でも投資比率を細かく調整していることです。「債券」も「オルタナティブ」も同じように細かく区分し、「キャッシュ・短期金融商品」が資産の50%程度を占めることもあります。2026年9月末時点のポートフォリオは「株式」約35%、「債券」約35%、「オルタナティブ」約21%、「キャッシュ・短期金融商品」約10%という比率です。

運用実績は、2026年9月末時点で、過去1年間が5.14%、3年で20.34%(年率6.37%)、2013年12月からの約13年間の設定来で34.93%(年率2.37%)になっています。比較的長い運用実績があり、安定的な結果を残していることが信頼感につながるでしょう。

■物価連動国債と組み入れファンド

物価連動国債は、物価指数(生鮮食品を除く総合指数=コアCPI)に連動して元本が動く国債の1種です。満期10年、最低購入単位10万円で、個人でも購入可能です。総務省統計局が発表しているコアCPIの年平均は、2000年以降では2005年までマイナス、2006年から2021年までは非常に低い水準で前年比プラスマイナスを繰り返しています。例外は2013年4月に日銀が量的・質的金融緩和を導入した影響で前年度比2.6%になった2014年のみでした。そして、2022年に前年度比2.3%となってから、2023年3.1%、2024年2.5%、2025年3.1%と明確な上昇トレンドとなっています。

物価連動国債ファンドは、この物価連動国債に投資するファンドです。ファンドにすることで、NISA(成長投資枠)が使えますし、ネット証券では百円から、銀行等でも千円からの小口で投資することが可能です。

もっとも残高が大きい「MHAM物価連動国債ファンド」(設定はアセットマネジメントOne)は、ファンドの基準価額の変動を「既に起こった物価の変動」、「将来予想される物価の変動(期待インフレ率)」、「金利の変動」に要因分析して年次の変化を説明しています。コアCPIが2022年度以降にプラス転換しているため、単純に考えれば2022年以降は「物価連動国債ファンド」の基準価額も上昇していると考えられますが、実際には、2025年、2026年と基準価額は下落しています。下落の要因は「金利の変動」によります。日銀の利上げもあって国内の金利が目に見えて上昇(債券価格は下落)したことによって、物価上昇分以上に物価連動国債にマイナスの影響がありました。この結果、「MHAM物価連動国債ファンド」の騰落率(税引前分配金再投資)は2026年9月末時点で1年はマイナス2.4%、3年はマイナス1.2%。足元の国内金利上昇によって、運用環境は厳しいものになっています。

しかし、5年騰落率は5.6%とプラスです。「IGO」と同様、やはりこちらも直近の成績でファンドの優劣を決めるべきではないでしょう。

■その他:「ゴールド」と「REIT」

「ゴールドファンド」と「REIT」も単純に考えるとインフレ対策に有効な手段にみえます。 金は利息を生まない資産です。コモディティはインフレ率に必ず連動するとは限らず、金利上昇局面では相対的な魅力が下がることがあります。また、REITは、長期では賃料の上昇を通じて物価に追随しやすい一方、短期では金利上昇に弱い面があります。どちらも単独で「インフレ対策の本命」とするのではなく、全体の一部として持つのが現実的です。