投資信託を選ぶとき、「分配金あり」「なし」で迷う人も多いだろう。かつてはシニア層の生活資金という印象が強かった分配金だが、いまや若者の間でも「自分へのお小遣い」として楽しむ「分配金お小遣い界隈」が話題となりつつある。とはいえ目先の現金収入だけに飛びつくと、大切な資産形成で足をすくわれかねない。何を重視してどう選ぶのが正解なのか。自身に最適な付き合い方を見つけていこう。

分配金の受け取り方と運用戦略の違いに注目

毎月の定期的な分配金収入に対するニーズは退職世代を中心に根強いものがあります。新NISAのスタートにあたっては、「毎月決算型」は制度設計当局から徹底的に嫌われ、NISA対象商品から外される憂き目をみました。しかし、足元2026年9月の投資信託の資金流出入動向をみると、月次の純資金流入額トップを独走する「オルカン」に次ぐ第2位の純資金流入ファンドは「世界のベスト(毎月決算型)」になりました。「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月・予想分配・為替ヘッジなし)」や「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)」といった毎月決算型のファンドが資金流入額ランキングのトップ5で3本を占めています。

この毎月決算型ファンドの人気は、退職世代のニーズだけでは説明ができません。むしろ、新NISAのスタート以降に投信市場に入ってきた20代、30代という若い世代の中にも分配金をめあてに投資する人が少なくないといわれています。実際にSNSで投資に関する情報を探してみると「365日毎日分配金生活」など、若いユーザーが毎月分配型ファンドの情報を頻繁に発信しています。この記事を開いたあなたも若い現役世代の皆さんかもしれません。

今回は、世界の優良企業を厳選する「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>」(愛称:世界のベスト)と、成長力の高い企業に集中投資する「WCM世界成長株厳選ファンド」(愛称:ネクスト・ジェネレーション)を取り上げます。さらに、それぞれの分配方針が異なる2つのコースを比較することで、合計4本のファンドを通じて、「運用戦略の違い」と「分配金の受け取り方の違い」が資産形成にどのような影響を与えるのかを考えます。

1.4本のファンドを比較

 

2本のファンドの違いを理解するうえで、まず押さえたいのは、運用対象が同じ世界株式でも、運用方針は異なるという点です。「世界のベスト」は「成長・配当・割安」の3つの観点から世界の株式を厳選する運用。一方、「WCM」は企業の参入障壁、企業文化、構造的な成長力、株価の割高・割安などを分析し、30~50銘柄程度に集中投資する運用です。つまり、前者は複数の評価軸から優良企業を選び、後者は持続的な成長が期待できる企業を厳選するアプローチといえます。

2.運用の中身はどう違う?

■「世界のベスト」:成長・配当・割安の3つを重視

2026年8月末時点の組入銘柄数は50銘柄。国別では米国が45.3%、英国が22.6%を占めています。業種別では金融が25.7%、資本財・サービスが25.3%、情報技術が11.1%です。

上位銘柄には3iグループ、カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ、友邦保険、ロールス・ロイス・ホールディングス、マイクロソフトなどが並びます。

特定の成長テーマだけに依存せず、金融や資本財なども含めて銘柄を選んでいる点が特徴です。50銘柄に厳選した集中投資でありながら、投資銘柄のパフォーマンスの特性の違いなどを踏まえてバランスの良いポートフォリオの構築を目指しているため、安定的に右肩上がりのパフォーマンスを残していることに特徴があります。

■「WCM」:持続的な成長力を重視する集中投資

「WCM」の2026年8月末時点の組入銘柄数は33銘柄。地域別では米国が37.8%、英国が15.6%、ドイツが9.3%、韓国が7.0%を占めています。

業種別では資本財が31.5%、テクノロジー・ハードウェア機器が10.0%、医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンスが8.6%。上位銘柄はシーメンス・エナジー、ロールス・ロイス・ホールディングス、台湾セミコンダクター、シー、サムスン電子です。

注目したいのは、両ファンドとも上位銘柄にロールス・ロイス・ホールディングスが組み入れられていることです。同じ企業の株式を保有していても、投資判断の基準や組入比率は異なります。「WCM」は上位銘柄への投資比率が高くなりやすいため、組入企業の成長が加速すれば恩恵が期待できる半面、個別企業の株価下落がファンド全体に与える影響も大きくなり得ます。

運用戦略の優劣は、単純に銘柄数や直近のリターンだけでは判断できません。どのような企業を選び、どのようなリスクを引き受けているかが重要です。