本連載ではこれまで、「いつ使うお金か」を起点に、資産の流動性を設計する考え方を見てきました。前回取り上げたのは、「値動きが少ないように見えること」と「リスクが小さいこと」の関係。今回はその視点を具体的な商品選びに落とし込み、3つの選択肢を「どれがいちばん儲かるか」ではなく、「どんなお金に、どの商品が合うのか」という軸で比べてみたいと思います。
NISAを続けながら「株式や投資信託以外にも資産を広げたい」と考えたとき、個人が少額からアクセスできる代表的な実物資産の1つが不動産です。不動産投資と聞くと、多くの方はマンションやアパートを直接購入する方法を思い浮かべるかもしれません。しかし最近は、まとまった資金がなくても、小口で不動産に投資できる選択肢が増えてきました。いずれも、複数の投資家のお金を集め、不動産から得られる賃料や売却益を投資家に還元する仕組み。ただし、投資対象の選び方、価格の決まり方、換金のしやすさは大きく異なるものです。
今回は、代表的な不動産投資の商品であるREIT(不動産投資信託)、不動産クラウドファンディング、不動産デジタル証券(ST)それぞれの特徴から、選び方のポイントを考えていきます。
最初の分かれ道は、「複数物件」か「この物件」か
3つの違いを理解するうえで、まず見ていただきたいのが「自分は何を選ぶのか」という点。
まずREITですが、そのうち日本の証券取引所に上場しているものはJ-REIT(ジェイ・リート)と呼ばれます。J-REITで投資家が選ぶのは、基本的に個別の建物ではなく投資法人です。投資法人は、オフィス、住宅、物流施設、ホテルなど、運用方針に沿って複数の物件を保有します。
つまりJ-REITへの投資は、複数の物件で構成されたポートフォリオに加え、投資法人や運用会社の戦略を選ぶこととも言い換えられるでしょう。保有物件は固定されておらず、運用方針に沿って取得や売却が行われるためです。
これによって、ひとつの物件で空室や修繕が発生しても、ほかの物件の収益で補える可能性があり、1銘柄の中でも分散が働きます。
これに対して、不動産クラウドファンディングと不動産STは、特定の物件や少数の物件を投資対象とする商品が中心です。
こちらも当然ながら「運用会社がどこか」も重要ですが、「このホテルの立地に魅力を感じる」「この住宅なら、長く賃貸需要が見込めそうだ」というように、投資先を具体的に選べる点が特徴の1つ。投資したお金がどの建物で働いているのかをイメージしやすいとも言えます。
株でいうなら、個別株と株式投資信託の違いに近いところがあるかもしれません。
ただし、わかりやすさと分散は別の話。投資対象が1物件なら、その物件の稼働率や賃料、修繕、災害、売却価格の影響を強く受ける構造です。
「中身が見えるから安心」とは限りません。中身が見えるからこそ、自分で確かめる項目の多さも覚悟したいところです。
