同じ「4%」でも……利回りを決める制度と収益の中身
不動産投資から得られる収益は、大きく2つ。賃料収入などをもとに定期的に受け取る「分配金」と、商品や不動産を売却したときに生じる値上がり益(または値下がり損が生じる可能性も)です。
ただし、利回りとして表示される収益の範囲は一律ではありません。背景にあるのは、商品の仕組みに加え、適用される法律や開示ルールの違いです。
不動産クラウドファンディングの多くは、不動産特定共同事業法等に基づき、事業計画上の想定利回りを表示します。賃料収入に加えて物件の売却益を織り込む案件があり、案件によっては売却益が収益の中心になることも。表示された数字を見る際は、賃料と売却益の内訳や、売却計画の前提を確かめる必要があります。
一方、J-REITや不動産STは、予想分配金や運用実績が開示されています。分配金利回りは、一般に1口当たりの予想分配金を、発行時の価格や取引時点での市場価格などで割って算出するため、購入後の価格上昇による利益や、価格下落による損失は含みません。表示利回りが低く見えても、収益性の優劣ではなく、数字に含める範囲が違うケースがあることを覚えておきましょう。
税制上の扱いも同じではありません。不動産クラウドファンディングのうち匿名組合型の分配金は、一般に雑所得として扱われます。一方、J-REITや不動産ST*の分配金は配当所得となり、申告分離課税が適用される商品として税率は20.315%、他の金融商品と損益通算も可能です。
*不動産STの中でも受益証券発行信託などの仕組みを採用しているものに限ります
このように、同じ「想定利回り年率4%(税引前)」でも、その中身は異なります。
賃料収入をもとにした分配だけで算出する場合もあれば、将来の売却益まで含める場合も。数字の大きさだけでなく、前提となる収益と税引後の手取りまで確かめたいところです。
では、どんな人にどの商品が向くのか
ここまで見てきた通り、REIT、不動産クラウドファンディング、不動産STそれぞれにメリットがあり、デメリットがあります。ですから、どれを選ぶのかは「投資対象」「流動性」「運用期間」などの条件から、「自分が何を優先したいか」どうかによります。
換金のしやすさと、複数物件への分散を重視するなら、J-REITが選択肢になり得ます。市場で日々売買できる一方で、不動産の運用状況だけでなく、市場全体の動きによって価格が変動する側面があります。
比較的少額から、投資する物件や事業を自分で選び、期間を区切って運用したいなら、不動産クラウドファンディングが候補です。少額から申し込める案件も多く、不動産投資を始める際のハードルを抑えやすい点が特徴です。
一方、運用期間中は換金できない商品が多いうえ、匿名組合型では分配金が一般に雑所得として扱われます。資金を動かせない期間と税引後の手取りも確認しておきましょう。また、不動産クラウドファンディングは公募商品と比べて開示が十分でない場合や、倒産隔離が十分に図れていない商品も存在するため、資金を投じる際は個別商品や運用会社の確認を特に入念にされることをお勧めします。
数年間使わない資金で、特定の不動産を選んで中期保有したい場合は、不動産STも考えられるでしょう。比較的大型の不動産に小口で投資できる一方、J-REITほどの流動性はありません。運用期間や売却の条件まで確認したうえで、ご自分に合っているのかを検討する必要があります。
ここで大切なのは、自分を「J-REIT向き」「クラファン向き」「不動産ST向き」と決めつけないことです。同じ人でも、お金を使う時期や目的が違えば、選ぶ商品は変わります。3商品は、どれか1つに絞るものではなく、資金の役割に応じて使い分ける選択肢と考えると、整理しやすくなるでしょう。

