「いつでも売れる」「原則売れない」「機会が限られる」

次に比べたいのが、流動性です。

J-REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように市場が開いている時間に売買できます。一方、現金化しやすいからこそ、市場心理によって価格が大きく振れるのは前回説明した通りです。

不動産クラウドファンディングは、あらかじめ数カ月から数年程度の運用期間を定め、その終了まで持ち続けるのが一般的。途中解約や持分の売却ができる商品もありますが、選択肢は限られます。

不動産STは流動性の面で、この2つの「中間」に位置しています。

上場していないため、J-REITのように毎日自由に売買できるわけではありません。一方、商品によっては、運用期間中に定期的な売却申込の機会が設けられています。

ただし、ここは慎重に見ておきたいところです。売却を申し込めることと、希望する価格で必ず売却できることは同じではありません。買い手や取扱金融商品取引業者による買い取りの有無、受付時期、価格の算定方法、手数料など、条件は商品ごとに異なる点にも注意が必要です。

したがって、流動性は次のように整理できます。

・日々売買できる代わりに、市場価格が動くJ-REIT
・原則として満期まで保有する不動産クラウドファンディング
・期中売却の機会がある場合もあるが、換金には一定の制約がある不動産ST

換金のしやすさは、売却条件で比べる
 
筆者作成
 

これらの特徴は、どれが優れているかという話ではなく、それぞれの商品に付随する「条件」です。連載第1〜4回で見てきたように、商品を選ぶうえでは、いつまでお金を動かさずにいられるか、どこまで価格変動や元本割れのリスクを受け入れられるかが重要になります。必要な流動性と取れるリスクの範囲が決まれば、自分に合う選択肢も見えやすくなるでしょう。

「市場価格」「償還結果」「鑑定評価」——3つの違いを決める「価格のものさし」

もう1つ、見落とされやすい違いがあります。それは、価格の決まり方です。

J-REITの価格は、市場で売りたい人と買いたい人の注文によって決まります。不動産の賃料収入や資産価値に加えて、金利、株式市場の動向、投資家心理なども織り込まれる仕組みです。

不動産クラウドファンディングでは、投資持分の価格などが継続的に算定・表示されない商品もあります。情報開示の内容や頻度は商品ごとに異なるため、投資家は運用状況や分配実績、売却計画の進捗を確認しながら、最終的な償還結果を待つケースがあることは覚えておきたいところです。

不動産STは、不動産鑑定評価額などをもとに、1口当たりの純資産額(NAV)を定期的に算定します。市場で成立した売買価格ではなく、裏付けとなる不動産の評価が価格を見る基準です。

ただし、すべての不動産STがこの仕組みに当てはまるわけではありません。最近では、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する「START」のような二次流通市場で売買され、投資家の注文から市場価格が形成される銘柄も登場しました。価格の決まり方という点では、J-REITに近い側面を持つ不動産STも出てきたということです。

もっとも、売買できる時間や注文を取り次ぐ証券会社、取引量などは銘柄によって異なります。市場で取引できるからといって、J-REITと同等の換金性があるとは限りません。

価格の見方は、J-REITなら市場の売買、不動産クラウドファンディングなら事業の進捗と償還結果、不動産STなら鑑定評価や市場取引など、方法によって異なります。

表示された数字だけでなく、誰が何を根拠に算定し、どのくらいの頻度で更新するのか。価格の「決め方」まで確認して初めて、3つの違いが見えてくるでしょう。

3つの選択肢、投資対象と価格の見方
 
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