資産運用領域専門のシンクタンクである「野村アセットマネジメント 資産運用研究所」。資産運用における課題の一歩先を見据えた視点から、さまざまな切り口のコラムをお届けします。※本シリーズは野村アセットマネジメント資産運用研究所「資産運用研究所Insights」から2026年9月公開「リスクの感じ方を測る」を転載したものです。

リスクの感じ方を測る

リスク回避度

かつての投資は、相場の上げ下げを予測するか、価格が上がりそうな銘柄を選ぶということに主眼が置かれていました。儲かりそうな銘柄が決定論的に存在し、それを見つけることができれば一攫千金だという考え方です。しかし、現代の標準的な投資論は、市場の不確実性が前提となっています。多くのことは不確実で、投資家もそれからは逃れられないということです。その不確実性をなんとかして定量化したのが将来のリターン分布で、投資家はその分布を特徴づけるリターンの期待値(予想される平均値)とリスク(予想されるばらつき)に基づいて投資判断を行っていくことになります。当然ながら多くの場合は期待リターンとリスクとの間にはトレードオフがあって、期待リターンが高ければリスクも高い(高リスク高リターン)、低ければ低い(低リスク低リターン)というのが普通です。

したがって、期待リターンとリスクのいくつかの組み合わせがあったときに、どれを選べば良いのかが一意に決まらないことがよくあります。例えば、期待リターン10%でリスク20%の投資と、期待リターン5%でリスクも5%の投資があったときに、どちらを選ぶかは人によって違うということです。あまりリスクをとりたくない人は後者を選ぶでしょうし、リスクをとれる(またはとりたい)人は前者を選ぶ可能性が高そうです。このような投資家の選好を記述するために効用関数というものが用いられ、それによってリスクに対する態度を表現することがよくあります。効用関数は抽象的である上に数学的なとっつきにくさもあって、投資の実務に使われることはあまりありません。それでも、投資家がリスクに対して自分自身がどのように感じているかを定量的に把握しておくことは、投資や資産の取り崩しに関する意思決定を行う上で極めて重要です。

効用関数として様々な形のものが提案されていますが、よく用いられるのは相対的リスク回避度一定(CRRA:Constant Relative Risk Aversion)型の効用関数です。この相対的リスク回避度というのは、資産額の変動率をリスクの大きさと捉え、それをどれだけ避けたいと考えているかを数値化したものです(資産の変化額をリスクの大きさと捉える場合は絶対的リスク回避度です)。それが資産の水準によらず一定だというのがCRRA型効用関数です。この効用関数を仮定したときのリスク回避度は平均的には2~3だと言われます。