投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、三菱UFJ銀行。
2026年9月の三菱UFJ銀行の販売額ランキングでは、トップ2は「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)」で変わらなかった。第3位には前月6位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」が大きく順位を上げた。前月第3位だった「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」は第5位に後退した。
※三菱UFJ銀行のサイト内の投資信託検索サイト、「ファンドランキングから探す」の「販売額:1カ月」に基づき編集部作成。期間は2026年9月。
https://fs.bk.mufg.jp/webasp/mufg/fund/ranking/hanbaigaku_1m.html
世界的な金利上昇でリスク資産に慎重?
9月の市場は、米10年債利回りが 5.28% に上昇し、日銀も政策金利を1.25%に引き上げるなど、株式市場の変動要因が多かった。主要株価指数もまちまちで、「S&P500」は0.45%安、独「DAX」は4.03%安、国内「TOPIX」も1.15%安と方向感に乏しい月だった。こうした環境下で、「ウェルス・インサイト(標準型)」は基準価額が3.55%安の月次リターンながらトップを維持した。対照的に、より株式比率の高い「積極型」は3.05%安と「標準型」より下落幅が小さいにもかかわらず、順位は前月の第3位から第5位へと後退した。
「MUFGウェルス・インサイト・ファンド」は、中長期の資産形成に活用するコアとなるファンドに位置付けられ、“積立投資のメイン商品”として定着していると考えられる。特に、「標準型」は年率リスク(標準偏差)を10.0%程度に設定し、安定性と成長性を両方追い求めることを意図した資産配分になっており、シリーズのメイン商品として積立投資の金額も大きく、販売額が市況に左右されにくいと考えられる。「積極型」は目標とするリスク水準が14.0%と、より「株式」に性格が近く、基準価額の変動が大きいため、市況の変化に応じた投資家の売買行動がランキングに反映されやすいのだろう。
さらに、9月は投資家が慎重姿勢を強めた月だった。米AI関連株の調整、金利上昇、為替の急変動などが重なり、「新規のリスクテイクを避ける心理」が働いた可能性が高い。「リスクテイクを避ける心理」が「ウェルス・インサイト」のようなバランス型ファンドを選択する心理につながったともいえるが、リスクテイクを避けた結果、投信の販売額が全般的に低調となり、積立投資で自動的に購入される「標準型」が結果的にトップを維持したとも考えられる。
安定分配の「世界のベスト」が大幅ランクアップ
「世界のベスト(毎月決算型)」は、前月第6位から今月は第3位へと急浮上した。同ファンドの9月の月次リターンは6.49%安と厳しい成績だったにもかかわらずランクアップしたことが特徴的だ。毎月分配型への需要は根強い。生活費の上昇が続く中、「年金+α」の収入を求める層にとって、分配金の安定性は大きな価値となる。ただ、現在主流となっている「予想分配金提示型」は、基準価額の水準によって分配金額が変動する。たとえば、「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース」の場合、基準価額が11000円以上12000円未満の場合は1万口あたり200円だが、11000円を下回ると200円以下の水準になる。分配金の対象額の範囲は、繰越額を含めた利子・配当等収益と売買益(評価益を含む)等の全額としているため、基準価額が11000円を割り込んでもいきなりゼロにはならないと考えられるが、基準価額が下落し続けると当然、分配金の支払いが止まることになる。
「世界のベスト(毎月決算型)」は予想分配金提示型ではなく、毎月の決算の内容を総合的に判断して分配金を決定するファンドだ。予想分配金提示型のように、基準価額の水準が12000円を超えて上がると分配金額が増加するというような楽しみはないが、比較的安定的な分配金の水準を保ちやすいといえる。実際、同ファンドは2020年1月から26年9月まで81カ月間連続で1万口当たり150円の分配金を継続している(それ以前は年央や年末に分配金を増額していた。150円以上の分配金は2017年1月から継続している)。基準価額の水準は2020年3月に1万円の大台を割れ、現在では8000円台後半をキープしている。
しかし、今回のランクアップは分配金需要だけでは説明できない。世界的な金利上昇局面となって、欧米の10年債利回りは年5%台となり、国内の長期金利も年3%程度になっている。「世界のベスト(毎月決算型)」が毎月150円の分配金を出していても年率換算の分配金利回りは2%強の水準でしかない。分配金利回りだけでは、市場の金利に太刀打ちできなくなってきている。むしろ、AI関連株が下落し、インデックスの方向感が鈍ったことによって、「オルカン」が2.86%安、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が2.11%安と主要インデックスが軒並み調整した局面にあって、銘柄選定力のあるアクティブファンドに期待する投資家が増える側面もある。
また、世界のベストは、「成長」「配当」「割安」を基準に銘柄を選ぶため、ハイテク偏重のインデックスとは異なる値動きになる。組入上位10銘柄は『M7』ではマイクロソフトしか入っていないように、インデックスとは構造がまったく異なるポートフォリオで運用している。インデックスの調整局面で、アクティブファンドに投資することで分散効果を得るというメリットも意識されたと考えられる。
2026年9月の三菱UFJ銀行ランキングは、市場の不透明感が強まる中、投資家は「守りのコア」と「攻めのアクティブ」を使い分けている。10月以降も、この二極化が続くのか注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩

