食料品、電気代、日用品。物価の上昇を実感する場面が増え、「お金の価値が少しずつ目減りしている」と感じる方も多いのではないでしょうか。預貯金の金利が物価上昇率に追いつかなければ、口座の残高は変わらなくても、買えるものは減っていきます。では、何に投資すればよいのでしょうか。実は、「インフレに強い資産を一つ選べば解決」という単純な話ではありません。インフレをテーマにした複数のファンドを客観的なデータで見比べながら紹介しつつ、現実的な備え方を考えます。

「インフレ」に備えるための資産形成とは?

インフレ時代には不動産価格が上昇しますから、インフレに備えて不動産、あるいは、不動産に投資するREIT(不動産投信)を購入することがインフレ対策になるように思えます。また、足元で金利(表面利率)が2%台に上昇している個人向け国債も魅力的な投資対象に思えます。一般論としては正しい考え方です。ところが、近年の金利上昇局面では、REITも債券も苦戦しました。理由は大きく二つあります。

一つは、市場が「予想されるインフレ」をあらかじめ価格に織り込んでいることです。

もう一つは、インフレが利上げを伴いやすく、金利の上昇が多くの資産にとって逆風になることです。リターンを左右するのは、物価の上昇そのものよりも、「予想外のインフレ」と「金利の動き」なのです。

だからこそ、特定の資産に賭けるのではなく、局面の異なる資産を組み合わせて備える発想が重要になります。たとえば、2026年5月に登場した「One/ティー・ロウ・プライス インフレガード&オポチュニティ・ファンド」(愛称IGO)は、さまざまな投資資産を組み合わせることで「インフレ(物価上昇率)+α」の運用成績をめざすファンドです。アセットマネジメントOneが設定し、ティー・ロウ・プライス・ジャパンの投資助言を受ける追加型の投資信託です。

「IGO」の運用方針は、長期的に日本の消費者物価指数(総合)を上回る資産の成長をめざし、「ガード(安定)」コースは消費者物価指数の上昇率にプラス年1%程度、「モデレート(標準)」コースは年2%程度、「オポチュニティ(積極)」コースは年3%程度上回るリターンを目標とする3コース制です。(ただし、この目標は長期的にめざすもので、達成を保証するものではありません)

このリターンを実現するための仕組みは、国内株式、国内債券、世界株式、世界債券、REITなどに分散投資する、ファンド・オブ・ファンズ方式です。特徴は、想定外のインフレ局面での下支えを期待して「インフレ関連資産ファンド」を組み入れている点です。2026年8月末のマンスリーレポートでは、「インフレ関連資産ファンド」の中身は天然資源株が約30%、金属・鉱業株が約26%、金関連株が約17%、不動産関連株(REIT含む)が約9%、米国の物価連動国債が約9%でした。ここで投資している資産こそが、インフレから資産を守るために活用できる代表的な資産といえます。「IGO」の「標準」コースでは、この「インフレ関連資産」をポートフォリオの20%程度保有します。そして、「国内株式」約7%、「国内債券」約26%、「世界債券」約16%、「世界株式」約32%でポートフォリオを構成しています。

さらに、「IGO」では日本のインフレ動向を原則として毎月判断し、資産配分を調整する運用プロセスをとっています。「積極」コースは「世界株式」の比率が約40%と高く、「安定」コースは「国内債券」が約33%と厚くなっています。コースの違いは、「株式」と「債券」、「インフレ関連資産」の比率の違いで調整しています。設定日は2026年5月26日で、9月末時点の設定来騰落率は、安定コースがマイナス1.8%、標準コースがマイナス1.6%、積極コースがマイナス1.3%でした。

内訳を見ると、興味深い動きがあります。インフレ関連資産は6月に下落、7月は原油価格の急上昇を背景に天然資源株などが上昇し、8月は一段と上昇しました。一方、7月、8月には国内外の債券が下落しています。「伝統的資産が弱いときにインフレ関連資産が下支えする」という設計意図の一端は見えます。しかし、数カ月の成績でファンドの優劣は語れません。

物価上昇に負けない程度の安定を重視するなら「安定」コース、値動きをある程度許容して成長も狙うなら「標準」コース、より高い成長を求めて株式の値動きを受け入れられるなら「積極」コースというのが選び方の目安です。どのコースも元本保証はなく、9月末の実績が示すとおり、短期では基準価額が下がることがあります。