投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、浜銀TT証券。

浜銀TT証券の月間売れ筋ランキングの2026年8月のトップに前月トップ10圏外から「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)(愛称:ネクスト・ジェネレーション)」が入った。第2位も同じ運用戦略で分配金の払い出しがない「WCM 世界成長株厳選ファンド(資産成長型)(愛称:ネクスト・ジェネレーション)」がランクインした。前月トップだった「イノベーション・インサイト世界株式戦略ファンド(予想分配金提示型)」は第3位に下がった。また、第4位には前月第6位だった「インデックスファンド225」がランクアップした。そして、第6位以下は前月トップ10圏外だったファンドがランクインした。第6位は「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、第7位と第10位には債券ファンドが入り、前月はトップ10から落ちていた「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第9位にランクインした。

 

※浜銀TT証券サイトのファンドランキング「月間売れ筋ファンド」に基づいて編集部作成。評価日:2026年8月31日現在。
https://awc.wealthadvisor.jp/webasp/hamagintt/

「AIブーム」と一線を画すアクティブファンド

浜銀TT証券の投信売れ筋(販売件数)でトップになった「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)(愛称:ネクスト・ジェネレーション)」(設定は朝日ライフ アセットマネジメント)は、参入障壁の持続可能性、企業文化、構造的成長力、バリュエーションなどに基づき、日本を含む世界の株式市場からボトムアップ・アプローチで30~50銘柄程度に集中投資するファンド。米国への投資比率が限定的(参考指数の「MSCI ACWI」で63.6%のところ同ファンドでは37.8%)、半導体・半導体製造装置(参考指数は14.8%のところ同ファンドは6.8%)への投資比率が低いなど、独自視点で投資銘柄を厳選している。この効果は2026年8月末時点で過去3年のリターンが188.9%と参考指数に連動するインデックスファンドの約92%を大きく上回っている。

「AIブーム」がいわれ、ここ数年は半導体関連銘柄やAI投資に熱心な大型テクノロジー銘柄が市場のけん引役として目立って活躍してきた。ところが、2026年に明らかになってきているのは、「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれた大型テクノロジー銘柄の株価上昇率が衰えて、「M7以外」に活躍銘柄が増えていることだ。前月トップだった「イノベーション・インサイト世界株式戦略ファンド(予想分配金提示型)」(設定は三井住友トラスト・アセットマネジメント)は、日本を含む世界の上場株式の中から、イノベーション企業で持続的な成長が期待できる企業に投資するファンドだが、主要な組入銘柄は、エヌビディア、アマゾン、アルファベット、アップル、マイクロソフトなど「M7」が中核を占めている。「ネクスト・ジェネレーション」とは組入銘柄が大きく異なる。

一方、第6位にランクインした「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」(アライアンス・バーンスタイン)は、米国株式のみを投資対象としているため、組入上位銘柄はエヌビディア、アルファベット、アマゾン、アップルなど「M7」銘柄が目立つのだが、その他に金融のVISA、あるいは、生活必需品のモンスター・ビバレッジなどが上位10銘柄に入っている。「イノベーション・インサイト世界株式戦略ファンド」が情報技術に55.5%を振り向けていることに対し、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」は情報技術に33.3%で、ヘルスケア、資本財・サービス、金融など幅広に投資対象を持っている。足元の運用成績が今一つ優れないため、2026年5月を最後に売れ筋トップ10から外れていたが、再びランクインしたのは、「M7以外」の銘柄が活躍するようになった市場で再びアライアンス・バーンスタインの調査・分析力に期待しようという動きが始まっているのかもしれない。

同じように「成長」にフォーカスしてインデックスに勝る運用成績をめざすアクティブファンドでも、1本1本のポートフォリオの中身はかなり違いがある。その違いはパフォーマンスの違いにも直結している。2025年までは「M7」をどれだけ確信をもって評価してポートフォリオに組み入れているかということが成績を左右してきた。それが、2026年になって、市場の物色範囲が「M7以外」に広がってくることによって、個々の運用会社の調査・分析力、運用力が問われるようになっている。アクティブファンドが並立する中で今後、どのファンドが投資家の支持を集めるようになるのだろうか。

金利上昇で債券ファンドに妙味

8月のランキングで目を引くのは、異なるタイプの債券で運用する2本のファンドがランクインしたことだ。1つは、主に米国の社債で運用する「コーポレート・ボンド・インカム(為替ノーヘッジ型)(愛称:泰平航路)」(三井住友DSアセットマネジメント)だ。8月末時点のポートフォリオは、クーポン4.6%、残存年数7.9年で直接利回りが4.7%、最終利回りが5.1%という内容だった。また、「米国地方債ファンド 為替ヘッジなし(毎月決算型)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)は、米国の地方債を投資対象としたファンドになっている。8月末時点でクーポンは5.47%で実効デュレーションは6.69年、直接利回りは5.46%だった。

表面的な利回りの妙味は「米国地方債ファンド」にあるように見えるが、社債と地方債の金利感応度や発行状況、今後の見通しなどによって、どちらのファンドが魅力的に見えるかは異なってくる。ただ、米国の10年国債利回りが5%台に乗せてきたことは、米国債券投資に妙味が出てきていることを感じさせる。1つにはインカムゲインが5%前後という高い収益を生むこと。加えて、米10年債利回りが5%台となるのは、2007年7月以来約20年ぶりの高い水準だということだ。金利が高い水準でエントリーすると、その後の金利低下局面で投資した債券価格の上昇が期待できる。もっとも為替は、円高・ドル安のリスクを考慮する必要がある。1ドル=160円を超える円安局面では日米の当局が協調して円買い介入を実施したばかりだ。

現在、世界的に金利上昇局面にある。米国が5%台、欧州は3%台で、日本の長期金利も3%台に乗せようとしている。これは中東情勢の緊迫化によって生じている原油価格の高騰が、世界的なインフレ懸念をもたらしているためだ。原油価格が落ち着けば金利水準も落ち着いてくると考えられている。このため、この金利上昇局面を債券投資の好機ととらえる向きも少なくない。株式一辺倒だった投信市場に、債券ファンドやバランス型などでも魅力的なファンドが登場してくるかもしれない。

執筆/ライター・記者 徳永 浩