妹夫婦の猛省
莉央の言葉に、美香は絶句した。
子どものわがままに正面から向き合おうとせず、叱る労力を惜しんで、タブレットやスマホを与えっぱなしにしていた自分の姿が、どれほど娘を暴走させ、周囲に大きな迷惑をかけていたかを痛感したのだ。
「ごめんなさい。私やっと意味がわかった……。ラクな子育てに逃げてばかりだったんだね……」と美香はその場に崩れ落ち、涙を流した。健太も莉央を固く抱きしめたあと、「本当に申し訳ありませんでした」と親戚全員に深く頭を下げた。
その夜、親戚一同で膝を突き合わせ、事件の決着について話し合いが行われた。
和樹の被害額8万円と祖母の3万円、合わせて11万円は美香夫婦の貯金から即座に弁済することになった。さらに莉央にはスマートフォンやタブレットの利用を当面禁止し、家庭でのお手伝いを通じて1円の重みと労働の大切さを学ばせる厳格なルールが決められた。
逃げずに見守ることこそが優しさ
連休の最終日、澄み渡った秋空の下で車に荷物を積み込んでいると、莉央があおいとかえでのもとへおずおずと歩み寄ってきた。
「あおいちゃん、かえでちゃん、ごめんなさい……」
小さな手で差し出されたのは、つたない文字で「アクセサリーけん」と書かれた画用紙の券だった。あおいとかえでは顔を見合わせると、優しく笑って莉央の頭を撫でた。
「いいよ! また一緒に遊ぼうね」
その光景を、美香と健太がかみしめるように見つめていた。その表情には、もう以前のような甘えや逃げはなかった。
涼やかな秋風が実家の庭を吹き抜けていく。和樹は妻の恵と目を合わせ、静かにうなずいた。互いに感情をぶつけ合い、痛みを伴いながらも向き合ったことで、歪んでいた家族の輪が少しだけ正しい形に戻った気がした。和樹は後部座席で穏やかに微笑む娘たちの顔をバックミラー越しに確認しながら、夕暮れに染まる帰路へと静かに車を走らせた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
