通貨の流動性が阻む、新興国から先進国への昇格

インデックスの裏側に「人間の判断」が介在しているという構図は、国ごとの市場区分(先進国・新興国・フロンティアなどの分類)においても同様です。

海老澤氏は、2026年6月下旬にMSCIの定期見直しで「韓国の先進国市場への昇格が見送られた」点に言及。「韓国は経済・技術面では明らかに先進国と言えるでしょう。しかし、自国通貨ウォンがハードカレンシー(国際的に自由に取引できる通貨)ではないこと、また空売り規制などが残っていて株式市場の自由度に懸念があることなどを背景に、こうした判断となりました。単なる経済規模や企業の成長性だけでなく、“投資のしやすさ”が、指数プロバイダーの定義によって決定される点に、インデックスルールの不完全さと難しさがあります」と解説しました。

さらに、かつて欧州債務危機の後に一度先進国から新興国へと格下げされたギリシャが、時を経て再びMSCIのインデックスルールで先進国へと復帰を遂げる(※2027年予定)動きにも触れ、「ギリシャが先進国に復帰できた背景には、単一通貨ユーロに留まり続けたことが極めて大きいでしょう。結局のところ、インデックスの分類においては『通貨の信認と流動性』は重要な要素になるのです」(海老澤氏)と指摘。日本の投資家は通常、「円」で投信を買い付けて、パフォーマンスも円建てで評価しているため意識されにくいものの、インデックスルールの策定や実際のファンド運用の裏側では通貨のマネジメントや株式市場のインフラ面の制約が強く作用しているという実態を解説しました。

 

篠田 尚子氏(楽天証券客員研究員 ファンドアナリスト)

 

日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。

 

海老澤 界氏(松井証券 シニアファンドアナリスト)

 

長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。