「値動きが緩やかである」ことの功と罪

こう聞くと、「では値動きが緩やかな商品のほうが優れているのか」と思われるかもしれません。しかし、話はそう単純ではありません。ここは正直に、「罪」の側からお話しします。

値動きが緩やかであることと、リスクがないことは、まったくの別物です。

先ほどの体重のたとえを思い出してください。測っていなくても、体重は変わっています。同じように、非上場資産の価値も、金利や賃料相場、経済環境の変化を受けて動き続けています。

評価の頻度が低いだけで、運用の最終地点——償還や満期のタイミング——では、その時点の資産価値が結果として反映されます。当然、当初の元本を下回る可能性もあるということです。

ですので、「値動きが緩やかだから安全」と考えてしまうのは早計ですし、誤解でもあります。見えないだけで、値動きの源泉であるリスクは、そこに存在し続けているのですから。

一方で、「功」の側面も確かにあります。それは、投資家自身の「行動」に関わるものです。

人間は、日々の値動きに耐えるのがあまり得意ではありません。下落局面で怖くなって売ってしまう。上昇局面で乗り遅れまいと焦って買う。

こうした行動の積み重ねによって、投資家が実際に手にするリターンは、商品そのもののリターンを下回る傾向があります。米国の調査では、2024年末までの10年間で、投資信託・ETFの投資家が得たリターンは年率7.0%と、ファンド自体のリターン(年率8.2%)を年率1.2%ポイント下回ったと報告されています(出所:Morningstar「Mind the Gap 2025」※米国の投資信託・ETFを対象とした過去の調査であり、将来の投資成果を示すものではありません )。ファンドが生み出したリターンのおよそ15%を取り逃した計算です。

値動きが日々見えない設計は、この自滅的な行動をいわば物理的に防いでくれます。長期で動かさないと決めた資金であれば、日々の市場心理にそもそも付き合わない。それ自体が、合理的な選択になり得るのです。