予告ほぼなしの義母の訪問
「疲れた……」
思わず声が漏れたそのとき、玄関のインターホンが鳴った。陽翔が真っ先に駆けていく。
「誰か来た! 僕が出る!」
「待って、勝手に開けちゃだめ」
葉月は慌てて立ち上がり、確認したモニターに映っていた顔を見て、一瞬言葉を失う。
軽い頭痛を覚えながら玄関を開けると、まぶしい日差しの下に義母の理香子が立っていた。この暑さの中、隣県からわざわざ来たらしい。
「お義母さん、急にどうしたんですか?」
「陽翔、もう夏休みでしょ? だから会いに来たの」
理香子は汗を拭いながら、さも当然のように笑った。突然すぎるとは思ったが、まさかここで帰ってほしいとも言えない。
「前もって連絡くださればよかったのに」
「出る前にメールを送ったわよ。届いてない?」
「あっ、すみません、携帯見れてないんです。朝からバタバタしてて」
「あら、そうなの。それより見て。陽翔にちょっとしたお土産を持ってきたのよ」
「なに? 開けていい?」
「もちろんよ。涼しいところでね」
仲良くリビングへ向かう2人。その背中を見送りながら、葉月は小さく息を吐いた。やっと座れたところだったのに、とは思う。それでも、あれほどうれしそうな陽翔を見れば、水を差す気にもなれなかった。
これくらい我慢しよう。
葉月はそう自分に言い聞かせ、理香子たちを追ってリビングへ戻った。
