夏休み3日目。葉月は朝からもう何度目かわからないため息を吐いた。リビングでは、小学1年生の息子・陽翔が床いっぱいにブロックを広げている。つい先ほどまでアニメに夢中だったのに、もう飽きたらしい。

「はあ……」

朝食の皿を片づけ、洗濯機を回し、掃除をして、昼食の準備もしなければならない。学校がある日は、まだよかった。陽翔を送り出したあとに家事をまとめて済ませ、ゆっくり腰を下ろしてお茶を飲む時間があったからだ。だが、夏休みに入ってからは、そのわずかな余白まできれいになくなっていた。

家事と育児に追われる葉月

「お母さん、これ一緒に作ろうよ」

「洗濯物を干したらね」

「うん、そのあとは公園行こう」

「今日は暑いから、もう少し涼しくなってからにしようか」

洗濯かごを抱えた葉月がベランダへ向かうと、すぐ後ろから陽翔の声が追いかけてきた。

「お母さーん、お腹すいた! アイス食べていーい?」

「ダメ。さっき朝ごはん食べたでしょう?」

「もうすいたもん」

振り返ると、陽翔は悪びれる様子もなく笑っている。

息子が子どもらしく明るく元気なのはありがたい。ただ、朝から晩までこの調子で相手をしていると、さすがに気力が削られていく。

洗濯物を干し終えてリビングに戻ると、放置されたブロックの隣にミニカーがずらりと並び、その向こうには宿題の絵日記が開かれていた。

「陽翔、遊ばなくなったものは片づけてね」

「あとでやる!」

「あとで、っていつ?」

「うーん、学校が始まるとき?」

葉月は苦笑するしかなかった。

昼食に冷やしうどんを作ると、陽翔は勢いよく平らげた。料理にあれこれ文句を言わないのが唯一の救いだ。食器を洗い終え、ようやく葉月も冷たい麦茶を手にソファへ腰を下ろす。ほんの10分でいいから1人になりたい。お昼寝しようか、と誘ってみたが、いやだと断られてしまった。