<前編のあらすじ>

専業主婦の勝美は、夫・裕樹と小学4年生の息子・拓海と暮らしている。穏やかだった裕樹だが、最近は勝美の家事に文句をつけてばかり。夜の飲酒量も増え、会社への不満を繰り返している。

そんな中、裕樹は拓海に塾へ通うことを提案する。勝美は自宅や学校から近く、友達も通う塾を見つけ、拓海も体験に前向きになる。しかし裕樹は進学実績を理由に却下し、自宅から遠い別の塾を一方的に選んだ。

通塾のたびに憂鬱そうな息子を見ながら、勝美は自分がもっと強く反対すべきだったのではないかと悩む。家事への文句や飲酒も続き、夫の変化を仕事疲れだけでは説明できないと感じ始めていた。

●前編【「お前は何もわかってない」穏やかだった夫がモラハラ?家事にも息子の塾にも口を出された妻が抱いた違和感

豹変した夫について語る妻

平日の昼下がり、勝美は駅近くの喫茶店で友人の杏子と向かい合っていた。

裕樹のことで誰かに相談したいと思ったとき、最初に浮かんだのが元心理カウンセラーの彼女だった。久しぶりの再会ということもあり、しばらくの間は同級生たちの近況や、お互いの子どもの話をしていたが、やがて杏子はおもむろにコーヒーカップを置き、勝美の顔をじっと見た。

「何か話があるんでしょう?」

「うん、大したことじゃないんだけど……最近、裕樹がちょっと変なの」

勝美はためらいながら、家で起きていることを話した。

帰宅すると突然掃除機をかけ、料理の味や献立に文句をつけること。塾を決めるときも、勝美や拓海の意見を強く否定したこと。

「お酒の量も増えてるの。毎晩みたいに会社の愚痴を言って、そのまま酔って寝ちゃって」

「前はそんな感じじゃなかったよね?」

「うん。几帳面ではあったけど、私が掃除したところをわざわざやり直したりはしなかったし、料理にもほとんど文句を言わなかった。お酒だってそう。あんなふうにくだを巻くことはなかったのに」

だからこそ、最近の裕樹の態度が引っかかっていた。自分が無意識に掃除の手を抜いていたのだろうか。献立に飽きたのだろうか。そんなふうに考えてはみたものの、どうにも腑に落ちなかった。