7.制度改正スケジュール
ここで、今回の制度改正の論点に立ち返ります。
改正案は成立しましたが、その施行にあたって前提となる、確定申告されていない金融所得を把握する有効な手段は、現時点では十分に整備されていません。
そこで検討されているのが、証券会社等が国税庁に提出している法定調書を活用する仕組みです。
具体的には、配当や譲渡益が記載された法定調書を集約し、いわば法定調書データベースと呼べる情報連携基盤を整備したうえで、その情報を市町村が医療保険料や窓口負担の判定に活用する構想が検討されています[図表3]。
ただし、これを実現するためには、「データベースの整備」「自治体システムの改修」「法定調書のオンライン提出の義務化」といった段階的な対応が必要であり、法案成立後すぐに実施されるものではありません。
厚生労働省によると、公布から4~5年程度を要すると見込まれており、後期高齢者医療制度において金融所得の反映が本格化するのは、2030~2031年頃になると見込まれています。
[図表3]法定調書方式(金融所得勘案方法)のイメージ
※金融機関等の事務負担に配慮し、税制上の法定調書の提出とのワンストップ化を図る
8.まとめ
今回の制度改正の本質は、「負担能力をより正確に把握し、それを制度に反映させる」という点にあります。この考え方は今後、医療や介護をはじめとする他の社会保障制度においても、同様の考え方が議論される可能性があります。
その意味で、本改正は単なる高齢者医療制度の見直しにとどまりません。資産形成においても、「どれだけ資産を持つか」だけでなく、「いつ、どの口座から、どのように使うか」まで含めて考えることが求められています。
資産形成の成果が、将来の税負担だけでなく社会保障負担にも影響を与え得るなか、資産を増やす視点に加え、その活用や取り崩しまで見据えた出口戦略の重要性はますます高まっています。
今回の制度改正は、資産形成だけでなく、資産の活用や取り崩しまで含めたライフプランニングの重要性を改めて示したものといえるでしょう。
なお、本稿における意見にかかわる部分および有り得べき誤りは、筆者個人に帰属するものであり、所属する組織のものではないことを申し添えます。
【参考資料】
- MUFG資産形成研究所 『退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査』(2020 年 10 月)
https://www.tr.mufg.jp/shisan-ken/pdf/kinnyuu_literacy_11.pdf
- 厚生労働省「第 203 回社会保障審議会医療保険部会 資料 1-2 世代内、世代間の公平の更なる確
保による全世代型社会保障の構築の推進(医療保険における金融所得の勘案について)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65886.html
(執筆:MUFG資産形成研究所 研究員 根本 浩之)
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