ついに「最悪のトラブル」に発展

惨劇が起きたのは、雨が降る金曜日の午後だった。

美咲がパートから帰宅すると、リビングからドスンというすさまじい重低音が響いた。慌てて扉を開けた美咲の目に飛び込んできたのは、あまりにも凄惨な光景だった。

65インチの液晶テレビが、床にうつ伏せで倒れていた。購入価格は22万円。画面は蜘蛛の巣状にひび割れている。その横には、優太が独身時代から大切に手入れしていた15万円のオーディオスピーカーがなぎ倒され、角が大きく削れていた。

「な……なにこれ……!?」

絶句する美咲だったが、しばらく放心したのち、証拠を残しておかなければと思い立ち、震える手でスマホを構えた。その間、翔太くんはといえば悪びれもせずサッカーボールを弄んでいた。

「テレビの裏にボールが入っちゃってさー、取ろうとしたら倒れちゃった」

部屋の隅で肩をすぼめ、今にも泣き出しそうに震えていたのは息子の陸だった。友達を家に入れた手前、翔太くんを止めきれなかった罪悪感で顔を蒼白にしている。

「ママ、ごめんなさい。僕がおやつ取りにキッチンに行ってる間に……。『室内でボールはダメ』って言ったんだよ……」

ママ友が放った「信じられない暴論」

帰宅した優太は、無惨なリビングを見て顔を蒼白にした。

「これは……やりすぎだろ……」

事の重大さを悟った優太は、翔太くんの母親・由香に連絡を取り、後日自宅に来てもらう約束を取り付けた。

だが、当日自宅にやってきた由香の態度は、夫婦の怒りをさらに逆撫でするものだった。

「あらー、災難でしたね。でも、子どもがやったことだし、こんな倒れやすい置き方をしてるお宅にも問題があるんじゃないですか?」

謝罪の言葉は一切なし。それどころか、あたかもこちらに落ち度があるかのような口ぶりに、美咲の脳内で何かがプツンと弾けた。

「何を言ってるんですか? 翔太くんがサッカーボールで遊ばなければ、倒れなかったんですよ? 言い訳はいいですから、とにかく弁償してください!」

美咲の要求に対し、由香はせせら笑うかのように言い放った。

「弁償? 使い古した家電の全額を弁償しろなんて、ただの言いがかりでしょ。警察でも何でも呼べば? うちからは1円も払いませんから。というか、子どもがやったことに大人がムキになって、恥ずかしくないんですか?」

●怒りに震える美咲と優太だったが、ママ友・由香の反論に絶句してしまう。話の通じない相手とどう決着をつけるのか——。後編【「うちの子を犯人扱いするつもり?」息子の嘘を信じて暴言を吐くママ友に、夫が突きつけた「動かぬ証拠」の中身】で詳説します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。