母の警告を拒む娘

「仕事に必要な内容で、必ず参加も求められてるなら、その時間も勤務として扱うべきじゃない?」

「そうなの? みんな普通に出てるし、長くても1回30分くらいだよ。家から参加できるから別にタダでもいいけど」

「よくないでしょう」

思ったより強い声が出た。案の定、友莉が眉をひそめる。

「お母さん、大げさじゃない?」

軽く流されそうになり、厚美の不安は一気に膨らんだ。大切な娘が都合よく扱われているのではないかと思うと、落ち着いていられない。

「初めてのアルバイトだから、おかしいと気づけないのよ。周りが何も言わないからって、正しいとは限らないでしょう」

「お母さんの言ってることだって、正しいか分からないじゃん」

「お母さんは結婚するまで働いてたんだから、友莉よりは世間のことを分かってるの」

友莉の表情が固くなった。

「だからって、私が何も考えてないみたいに言わないで。お母さんは、すぐそうやって決めつけるよね」

「決めつけてるんじゃなくて、友莉を心配してるの」

「じゃあ、何でもお母さんの言うとおりにしろってこと?」

「そんなこと言ってないでしょう。ただ、おかしいものはおかしいって」

「心配って言えば、何を言ってもいいわけじゃないから」

友莉はノートパソコンを抱え、椅子を引いた。

「もういい。私のことは放っておいて」

「友莉……!」

扉が閉まる音を聞きながら、厚美はその場に立ち尽くした。無給で研修やミーティングを強制することがおかしいという考えは変わらない。しかし、友莉に拒絶された途端、後悔の念が込み上げたのも事実だ。

厚美は手に持った布巾を置き、ソファに倒れ込むように腰を下ろした。

●高校1年生の娘・友莉を心配しながら、初めてのアルバイトへ送り出した厚美。しかし、必須の研修や定例ミーティングが無給だと知り、バイト先への疑念を口にする。何も分かっていないと決めつけられた友莉は、「私のことは放っておいて」と厚美を拒絶してしまう…… 後編【高校生なら黙って従う?無給の必須研修を強いる海の家…過保護な母を驚かせた娘の反撃】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。