勤務外に課された研修

夜、厚美はキッチンで食器を拭きながら、ダイニングテーブルでノートパソコンを開く友莉の姿を眺めていた。イヤホンをしていたので、初めは友人とのビデオ通話かと思っていたが、友莉は「はい」「分かりました」と短く返事をしながら、時折手元のメモ帳に何かを書き込んでいる。単なる雑談ではないと気づいた厚美が注意深く観察していると、どうやらバイト先の店長と話しているらしいことが分かった。

30分ほどして通話が終わると、友莉は伸びをして背もたれに寄りかかった。

「今の電話って、バイト先?」

「うん、定例ミーティング。明日の流れと、シフト変更の確認」

「それだけ?」

「この前は接客の研修もあったよ。あと、衛生管理のやつ」

厚美は布巾を持ったまま尋ねた。

「その時間も、お給料は出るのよね?」

「出ないよ」

あまりに軽い返事に、厚美の手が止まる。

「今のミーティングも?」

「うん。働いてるわけじゃないし」

「でも、参加しなくていいわけじゃないんでしょう?」

「基本は全員参加。休むなら理由を言って、あとで内容を確認することになってる」

それなら実質的には仕事ではないか。胸に不信感が広がった。