昨今、目まぐるしく変わる社会保険の制度。特に、厚生年金の適用拡大など社会保険制度の見直しが進み、経営者でも制度を誤解しているケースは少なくありません。

近年、日本年金機構は社会保険の適用調査を強化しており、未加入だった法人に対して過去にさかのぼって保険料の納付を求められるケースもあります。今回は、一人で法人を経営してきた建築業の社長が直面した事例をもとに、社会保険の仕組みと経営者が知っておくべきポイントを解説します。

「社員がいないから大丈夫」と思い続けた一人社長

佐々木健一さん(63歳・仮名)は、地方で建築会社を経営しています。若い頃から大工として地域の地元工務店や建設会社の下請け等で30年以上仕事を続けてきました。

独立後は順調に仕事も増え、しばらくして節税や信用面を考えて法人を設立。社員は雇わず、自分一人だけの会社でした。

現場では今でも現役、朝から夕方まで工具を持ち働き続けています。役員報酬は毎月60万円を超え、会社も毎年利益を計上していました。

「社員もいないし、一人会社だから社会保険なんて関係ない」

それが佐々木さんの長年の考えでした。

「年金なんて将来どうなるかわからない」
「保険料を払うくらいなら、その分自分で貯めた方がいい」

そんな話を酒の席でもよく口にしていました。しかし63歳になったある日、想定外の出来事が立て続けに起こります。

長年仕事を受けていた取引先の工務店が突然倒産。未払いの売上も回収できる見込みはなく、これから予定していた新築住宅の仕事が一気になくなってしまったのです。

さらに、資金繰りに悩み自分の個人資産を使い、不安を抱えるなか、一通の封筒が届きました。

差出人は、日本年金機構。そこには「厚生年金保険・健康保険適用に関する調査のご案内」と書かれていました。