「扶養の範囲で働いていた方が得だから」
そう考えてパートの勤務時間を調整している人は少なくありません。確かに、社会保険料や税金の負担を考えると、目先では手取りが減るように感じることもあります。しかし、その判断が長い目で見たときに、本当に家計にとって有利だったのか……。
今回紹介するのは、長年「夫の扶養の範囲」で働き続けてきた67歳女性の事例です。現役時代には気にならなかった問題が、夫の退職とともに一気に表面化しました。老後の家計を見つめ直したとき、夫婦は思いもよらない現実に直面することになったのです。
「夫の扶養の範囲で」が当たり前だった
佐藤洋子さん(67歳・仮名)は、1歳年下の夫・健一さん(66歳・仮名)と地方都市で暮らしています。
健一さんは地域の中堅企業に長年勤務し、真面目に働いてきました。
洋子さんは結婚を機に専業主婦となり、子育てに専念してきました。子どもたちが成長し手が離れると、近所のスーパーでパート勤務を始めました。
ただ、勤務先にはいつもこう伝えていました。
「夫の扶養の範囲でお願いします」
勤務時間を調整し、収入が一定額を超えないように働いていたのです。
年末が近づくとスーパーは大忙しで、クリスマスや年始の準備で人手不足になり、店長から「もう少しシフトに入れない?」と頼まれることもありました。
しかし洋子さんは断っていました。
「扶養から外れると損だから」
周囲からもそう聞いていましたし、自分自身もそう信じていたのです。
そんな生活を何十年も続け、子どもたちが独立してからは時間を減らし、週に2回、1回3時間ほどにシフトを減らしてもらっていたのでした。
ところが、夫が退職し年金生活が始まってから約1年が経過した頃、夫婦は漠然とした不安を抱くようになります。
通帳を見るたびに預金残高が減っていくのです。
現役時代には考えもしなかった老後のお金の問題が、少しずつ現実味を帯び始めていました。